今回紹介するドラマは ヴィエナ・ブラッド
2019年 イギリス、オーストリア合作 チャンネル:BBC Two
原題:Vienna Blood(ウィーンの血)
全6話(1話45分前後)
原作:英国の作家、臨床心理学者フランク・タリスの『リーバーマンペーパー』
【ヴィエナ・ブラッド】は、2022年シーズン3がBBC Twoで放送されています。
このドラマが注目されるその訳とは…
何と言っても、人気ドラマ【シャーロック】【ドクター・フー】【レオナルド】などで
有名な脚本家スティーブ・トンプソンが全話担当してるからでしょう。
このドラマに何度も出てくるフロイトという人物がいます。
そこで、このドラマを楽しむためにも
ここでチョットだけ、彼について補足をしておきます。
マックスが啓蒙するフロイトについて
このドラマは、1900年代のウィーンが舞台。
主人公のマックス・リバーマンは、同じユダヤ人の心理学者、精神科医のジークムント・フロイトを啓蒙する精神科医の研修生です。
しかし、当時のウィーンではフロイトの精神分析は誰にも受け入れられず軽蔑さえされていました。
ところが、マックスはこのフロイトの理論から、犯人をプロファイルするなどと、誰も考えつかない斬新な手法で難事件に切り込みます。
そして、ウィーン警察のラインハルト警部とタッグを組み難解な事件を次々と解決していく展開です。
現代では、精神分析学の創始者であり超有名なフロイトも、当時のウィーンでは彼の研究も書籍も
全く理解されず孤立状態だったようです。
このドラマでもマックスの担当教授は、フロイト式臨床(催眠療法や自由連想法)を患者に治療する
マックスに敵意をむき出しにして邪魔してきます。
ところが、そんな教授の治療法はどうかというと???
それは、患者にとってはまるで拷問と同じで迷惑極まりない治療なのです。
いつの時代も…新たな開拓者は叩かれてしまうものですね~
このドラマの見所は
現在では当たり前のプロファイルや科学捜査を取り入れたコンビが
懐疑的な周囲を驚かせて大活躍するサイコスリラーです。
キャスト紹介
主人公マックス役のマシュー・ビアードがアップになるたび
彼のゆで卵のようなお肌に見とれてしまいました…(ハリよカンバ~ック)
マックス・リーバーマン/マシュー・ビアード
精神科の研修医 イギリス出身のユダヤ人 鋭い観察眼と心理学的アプローチで犯人をプロファイルします
オスカー・ラインハルト/ユルゲン・マウラー
ウィーン警察の警部 マックスとコンビを組んで難事件を捜査します
オーガスト・シュトラッサー警察署長 /サイモン・ハツル
ウィーン警察の署長 町の名士に友人が多く、捜査の裏でラインハルト警部の足を引っ張ります
ハウスマン巡査部長/ジョセフ・エラーズ
ウィーン警察の巡査部長でラインハルトの忠実な部下だが、要所要所で捜査の足を引っ張るミスを犯します
クララ・ヴァイス/ルイーゼ・フォン・フィンク
マックスの恋人
アメリア・リドゲイト/ジェシカ・デ・ガウ(シリーズ1)
博物館の職員で科学者 美術館でパニックを起こしマックスと出会います
リア・リーバーマン/シャーリーン・マッケンナ
マックスの姉 夫が戦死したため実家に戻っています
レイチェル・リーバーマン/アメリア・ブルモア
マックスの母親で良き理解者
メンデル・リーバーマンとしてのコンレス・ヒル
マックスの父親でマックスの精神科医になる事や研究の事を良く思っていません
あらすじ
第1話 最後の交霊会 part1(45分)
1906年ウィーン
ウィーン警察のオスカル・ラインハルト警部とハウスマン巡査部長は
鍵のかかったドアを蹴破って、通報のあった部屋に入りました。
「これはひどい」
そこには、銃で撃たれたウェディングドレス姿の女性の死体がソファに横たわっていました。
「被害者は?」
「名前は不明です」
警部とハウスマンは、若い女性の死体に哀れみを感じました。
その時、警部はサイドテーブルに置かれた遺書に気づきます。
“禁断の果実を味わった 私は神の手により地獄に堕ちる”
警部は、その遺書を読み上げました。
「自殺ですね」
ハウスマンが言います。
しかし…
「なら、凶器はどこだ」
警部が死体の周りを探しても銃はどこにもありません。
「誰かが盗んだ?」
ところが、ドアには鍵がかかっていました。
おまけに部屋はアパートの4階で、窓には鍵がかかっています。
「自殺で凶器がないのは妙ですね」
ハウスマンが言う通り自殺では片づけられません。
ウィーン警察に戻った警部は、シュトラッサー署長に事件の報告をします。
「遺体を着飾り、自殺を偽装し凶器を持ち去った?」
警部は、密室殺人を主張しますがシュトラッサーは
「壁を通り抜けられる者が犯人?君に任せるのは間違いかもな」
と言って全く信じようとしませんでした。
「大丈夫です。任せて下さい」
「そうか なら紹介する」
するとシュトラッサーは、アドバイザーとして病院の研修医を警部に紹介すると言います。
しかし、警部は部外者を入れたくないと断ろうとしますが…
「丁寧に対応したまえ、友人の息子なんだ」
と警部に選択の余地はないようです。
「リバーマン先生」
マックス・リバーマンは、犯罪心理を研究している研修医でした。
続きは本編で!
第3話 夜の女王 part1 (46分)
スラム街に住む移民の娘ヨゼフィーネは、町の通りに祀られたイエスに祈りを捧げます。
「神よ 助けたまえ」
そして、彼女は仕事場へ足早に向かいました。
ヨゼフィーネは、スラム街にある娼家で働いていました。
するとマダムがヨゼフィーネを呼びに来ます。
「また、彼よ待ってるわ」
その夜、マックスとクララの婚約パーティが開かれました。
ユダヤ教信者の中にラインハルト警部の姿も見えます。
「招待をどうも」
「大事な来賓だ」
マックスは歓迎して警部と握手を交わします。
「6月に挙式を」
「6月か、腹をくくる期間だな」
その後もパーティー客との歓談が続いていました。
「警部、すみません。事件が起こりました。」
そこへ、ハウスマンが警部を呼びに現れたのです。
彼は、マックスと甥のダニエルと歓談の最中でした。
「失礼します」
警部は、マックスと家族に挨拶するとハウスマンと共に殺人事件の捜査へ向かいました。
「帽子もとらずに」
ハウスマンの無礼な態度にマックスの父親メンデルは怒り心頭のようです。
マックスが寂しげに2人の後ろ姿を見送っていると、彼の寂しげな様子に気づいたクララがやって来ます。
「行きたいの?」
「いや、違う…」
マックスは少し動揺してしまいます。
「どうせ、もうお開きよ」
「ありがとう」
クララの許しを得たマックスは、嬉しそうに彼女の頬にキスをすると、急いで警部たちの後を追いました。
「同行しても?」
追いついたマックスは、警部たちの馬車に真っ先に乗り込みました。
2人は、マックスの思わぬ参加に呆気にとられます。
「あと少しってところで」
警部は、気の利かないハウスマンにチクりと言いました。
「行かないの?」
2人はマックスに急かされ馬車に乗り込みます。
事件のあった現場は、スラム街の娼家です。
家の中に入ると…
そこは、4人の女性が無惨に刺殺された凄惨な現場でした。
しかし、犠牲者の最後の1人は体を綺麗に洗われてベッドに寝かされ胸の上で手を組んでいました。
「極めて凶悪だ。だが最後の犠牲者を横たえるところは…何か愛を感じる」
マックスは警部に聞かれて、こう答えました…
そしてその後、事件の犯人が逮捕されます。
彼は、知的障害で幼児能力程度の理解力しかないヨゼフィーネの常連客でした…
第5話 迷子 part1(47分)
暗闇に包まれた森の中を、1人の士官候補生が逃げていました。
彼は、何者かから逃げているようです。
途中で彼のマントが枝に引っかかって脱げてしまいます。
それでも彼は必死で逃げました。
しかし、とうとう追い詰められてしまいます。
「頼む やめてくれ…」
リバーマン家では、メンデルの誕生日を祝っていました。
みんなで祝杯をあげると
マックスの姉リアは、息子のダニエルにプレゼントを渡すように促します。
リアの1人息子のダニエルは、陸軍士官学校の候補生で普段は寄宿学校へ通っています。
そして、先日のマックスの婚約パーティに参加するために帰省していました。
「どうぞ、おじいちゃん」
「ありがとうダニエル。何だろうな?」
「素敵だ!ありがとう」
メンデルは、ダニエルをハグして喜びを伝えます。
「ダニエル ナイフをお願い」
今度は、マックスの母親レイチェルがケーキカットのナイフを頼みます。
そこで、ダニエルはキッチンにナイフを取りにダイニングを出て行きました。
「クララは?」
レイチェルは、婚約者のクララが来ていない事が気になっているようです。
「来られないんだ」
「体調不良か?」
「用事があると」
マックスは、2人の関係が終わった事を家族に言えずにいました。
「仲は順調なの?」
レイチェルは心配になりました。
「騒ぎ過ぎだわ。マックスが図に乗る」
そう言ってリアはマックスに振ります。
「実を言うと 残念ながら…婚約を解消した」
とうとうマックスは、隠し通せずに意を決して告白します。
「笑えない冗談だわ」
レイチェルは、余りにも突然の告白に信じられないようです。
ところがその時…
キッチンからメイドの悲鳴が聞こえました。
「ダニエル?」
みんなが慌てて駆け付けると
ダニエルの腕には、ナイフで切った傷がありました。
「やめるんだ」
マックスは、急いでダニエルからナイフを取り上げ応急処置を施します。
「何てことだ」
「どうして?」
一体、ダニエルに何が起こったのか…
誰にも理解できませんでした。
ダニエルの手当てを終えたマックスは、メンデルとレイチェルの待つダイニングに戻って来ました。
「こんな事故の時に、あなたがいてくれて良かった」
処置が終わって、レイチェルは安堵したようです。
しかし、マックスはこれは事故ではないと告げます。
「向き合わなきゃダメだ。あれは自傷行為だ」
「あの子を患者扱い?」
レイチェルは、マックスの言葉が受け入れられません。
「ダニエルは動揺しているんだ。ママ 助けてあげよう」
そして、ダニエルの世話をしていたリアも信じられない光景を目にしていました。
「何てこと…」
何とダニエルの背中には、幾つもの傷跡が残っていました。
もう、ダニエルの心は壊れかかっていたのです…
そして、ダニエルの問題を重く受け止めたマックスと警部は、陸軍士官学校へ向かいます…
続きは本編で!
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勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
【シャーロック】の方が面白かった
と感想を書きましたが…
【シャーロック】の場合、主役を始め適役のモリアーティやマイクロフトなど個性的なキャラクターのオンパレードでした。
それに比べてみると
【ヴィエナ・ブラッド】では、よくある設定で主人公のマックスでさえ印象の薄いキャラでした。
しかし、このドラマの肝は現代にも通用するプロファイリングが
「プロファルだと…何言ってるんだ!」
とバカにされているウィーンの地で
難解な事件を鋭い観察眼で解決していき、周囲をアッと言わせるところなのです。
【シャーロック】は、変人たちの頭脳戦を描いた推理ショーであり
【ヴィエナ・ブラッド】は時代の変革を捜査手法から描いています。
これを比べる事自体がナンセンスでした~
とは言え…
派手な演出が控えめなストーリーは、視聴者を飽きさせてしまいます。
そこで、脚本家スティーブ・トンプソンはチャンと読んでいました!
マックスが警部に言う決まり文句が実にイイ!
「welcome to the case(事件にようこそ!)」
このマックスの一言で物語のショータイムが始まります。
さすがでした~