今回紹介する映画は ネジの回転
イギリスBBC ONE製作 BBC の 2009 年クリスマス シーズンの番組として初めて放送されました。
放送時間:1時間28分
原題:The Turn of the Screw
原作:ヘンリー・ジェイムズの1898年に発表された同名の心理小説
この名作『ネジの回転』を映像化した作品は、これまでにも幾つもありました。
- 映画『回転』(1961年)主演:デボラ・カー
- 映画『ザ・ダークプレイス 覗かれる女』(2006年)主演:リーリー・ソビエスキー
- 映画『ザ・ターニング』(2020年)主演:マッケンジー・デイヴィス
- ドラマ『ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー』(2020年)
今回は、イギリスのBBCが製作。しかも出演は、何と!あの人気ドラマの夫婦が共演しています。
キャスト紹介
アン/ミシェル・ドッカリー
出典:ウィキメディア・コモンズ
純粋で無垢な田舎娘のアンは、ブライにある貴族屋敷で家庭教師の仕事をする事になりました。しかし、まだ未熟なアンが行き成り屋敷の全権を任されてしまいます。
フィッシャー博士/ダン・スティーブンス
出典:ウィキメディア・コモンズ
療養所の精神科医。無神論者のフィッシャーは、戦争で傷ついた兵士達に聖書も神父も慰めにならない、必要ないと考えていました。
そんな彼が、アンの心療を施すうちに何かが変わって行きました。
サラ・グロース/スー・ジョンストン
ブライ屋敷の家政婦。
フローラ/エヴァ・セイヤー
ブライ屋敷の孤児の甥。何か問題を起こし寄宿学校を退学させられ屋敷に帰って来ました。
マイルズ/ジョセフ・リンジー
ブライ屋敷の孤児の姪
ピーター・クイント/エドワード・マクリアム
ブライの元使用人。主人が不在をいい事に、暴虐の限りを尽くしました。一方でマイルズを可愛がりましたが、悪影響を与えました。
転んだ時の打ち所が悪く既に亡くなっています。
エミリー・ジェッセル/ケイティ・ライトフット
アンの前の家庭教師。クイントと深い関係なりますが、妊娠発覚と同時に捨てられ入水自殺をします。
あらすじ
1921年ロンドン
今日も精神科医のフィッシャー博士は、療養所の患者アンの心療に部屋を訪れました。
病室の入り口では、看護婦が監視しています。
「話したか?」
フィッシャーは看護婦にアンの様子を聞きました。
「いいえ。いつも通り何も」
看護婦は首を横に振りました。
そして、彼は、看護婦に鍵を開けてもらい部屋へ入ります。
アンは、いつもの様に虚ろな表情で、窓際の椅子に座っていました。
フィッシャーは、近くの椅子に座りアンの資料に目を通します。
その中に、何枚も写真が入っていました。
彼がその写真を何気に床に置くと、アンは一枚の写真に目を留めます。
「アン、どうした?」
アンの様子に気づいたフィッシャーが声をかけると、
アンは悲しそうな顔をして、写真から目を逸らしました。
そこで、フィッシャーはアンに説得を試みます。
「君を裁くのではなく、助けたい。この美しい邸宅で起きた悲惨な出来事を話して欲しい」
こうして、アンの一連のフラッシュバックが始り、悲惨な出来事が語られて行きます。
20歳の若く純粋なアンにとって、その日は初めての大都会でとても興奮していました。
この日は、家庭教師の面接のため、ロンドンのウィグモア通りの家を訪れたのです。
その家の主人は、若くて洗練された貴族でした。
彼は、戦争で孤児になってしまった甥と姪の家庭教師を探しているのだと話しました。
そして、その子ども達はロンドンではなく、ここから離れたブライの屋敷に住んでいるようです。
彼は、自分にとってブライ屋敷は不要だが、結婚する時には必要になるかも…と何か意味ありげに話します。
「ご結婚のご予定が?」
「いづれはするさ…女性があふれている…選ぶのが難しい」
そう言って彼は、アンの横に近づくと目線の高さを合わせ、アンの瞳を探るように見つめました。
「君は臆病か?」彼はアンに訊きます。
「私は違います」アンがそう答えると
「今までの家庭教師は、途中で逃げ出した。ジェスルは美しい娘で気に入っていたが失望した」
とアンの前にいた家庭教師の話をしました。
そして、彼はアンが家庭教師を引き受けるなら、自分の手を煩わさないで欲しいと
彼女の手を小指でそっと撫でながら、甘えたように懇願するのです。
「お約束します」アンは彼の期待通りの返事をしました。
「もし、すべてうまく進み、君がこの仕事で成果を出したら会いに行くよ」
彼は、アンの手を撫でながら言葉巧妙に女心をくすぐります。
アンは、彼の思惑通りすっかり虜になっていました。
こうしてアンは、2人の子供の家庭教師を引き受け、悲惨な運命が待つブライへ出発したのです。
続きは本編で!
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(配信は投稿時のものとなります)
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
この作品の結末は、視聴者の判断に委ねらる曖昧な形で終わります。
この屋敷で起こった一連の出来事は、悪魔の仕業なのか!
それとも、アンの狂気だったのでしょうか!
今回の映像化では、アンの視点で物語は展開しながらも、後者の側面を強く強調していました。
特にアンのフラッシュバックの中で、性的な妄想が何度も繰り返されました。
そこがこの映画の評価を下げている一因なのかも…
しかし、原作は心理小説の名作です。
登場人物たちの心理的な駆け引きが見所なのです。
この作品にも、もっと深い意味が込められていないか…
フィッシャーの心理変化にフォーカス
そこで、この作品は従来アンの心理状況にフォーカスされることが多いのですが、
今回は、精神科医で無神論者のフィッシャーの心理変化にフォーカスしていきたいと思います。
フィッシャーは、冒頭でアンの信仰について質問しています。
するとアンは「悪魔を信じている」と答えました。
この時、彼は戦争で傷ついた兵士たちの現状に神や、聖書など役に立たないと憤っていました。
なのでアンのこの一言は、フィッシャーに大きなインパクトを与えたに違いありません。
その後、フィッシャーは、アンのこれまでの経緯をアンから聞いていくことになります。
アンは、牧師だった父親から厳しく抑圧されて育てられました。
また、雇い主の紳士は、初心なアンをあからさまに誘惑しています。
このように様々な要因から、雇い主への承認要求や恋心が、無垢で経験の少ないアンの情緒に強く影響を与えた事は間違いないでしょう。
そんなアンの女心を利用したのが無責任な紳士でした。
彼は、屋敷の事や子供たちの問題が起こっても自分に相談することを禁止しました。
そのため、アンは手のかかる悪ガキのマイルズの問題を1人で抱え込みます。
また、なぜマイルズが退学させられたのか…
その理由は、最後まで明らかにされません。
アンは、さぞ混乱したことでしょう。
そんな状況で、情緒不安定なメイドのカーラから、クイントの話を吹き込まれました。
こうして彼女は、増々現実を歪んで捉えるようになり、クイントとジェスルの幽霊を頻繁に目撃するようになりました。
そして、追い詰められたアンは、クイントの霊と対峙する決意を固め、マイルズを巻き込んで事件が起こってしまいます。
このアンの話を聞くうちに、フィッシャーは「悪魔を信じるよ」と悪魔を信じるようになります。
ここからは勝手な推測ですが…
きっとこの「悪魔を信じるよ」と言ったフィッシャーの心理の変化こそ、この作品を観ている私達自身の心理ではないでしょうか。
ここに、制作側の狙いを感じたのですが
深読み過ぎかな?
ところが、フィッシャーの視点で作品を観るとラストシーンがより興味深くなりますよ。
何故フィッシャーが悪魔を信じるようになったのか…
フィッシャーは、こんな精神状態のアンから事件の経緯を聞くわけです。
彼の変化には、職場の置かれた状況が大きく影響していたように思います。
上司の教授からは、アンの心療を反対され、また、療養所は戦地から戻った負傷兵で溢れかえり、彼はやりきれない思いを抱えていました。
そんな状況下でフィッシャーは、アンを救いたいと強い使命感に燃えたのではないでしょうか。
しかし、フィッシャーはアンを救うことは出来ず自責の念に駆られます。
そして、ラストシーンではアンを連れて行く警官の1人が、何と!クイントに見えてしまうのです。
そうなんです!人は見たい物を作り出すのです。
しかも無意識の感情の中で…
悪魔とは、人間の弱さ故に作り出された悪の化身では…
あなたは、悪魔を信じますか?→ここが狙い
信じるか信じないかは…あなた次第!(どこかで聞いたフレーズだ!)
まあまあ、ダウントンアビー・ファンには、メアリーとマッシューの共演が観られただけでも、ラッキーかもしれませんね。
因みに、グロース夫人役のスー・ジョンストンもダウントンアビーに出演していました。
どの役だったか…分かるかな~