今回紹介するドラマは パースト・オブ・ラブ 愛に焦がれて
2021年 イギリスBBC One 脚本・監督:エミリー・モーティマー
原題:The Pursuit of Love(愛のちから)
全3話(1話51~52分)
原作:ナンシー・ミットフォードの同名小説『The Pursuit of Love』
1945年に発表された『The Pursuit of Love』は、『寒冷地での恋』(1949 年) 『アルフレッドに言わないで』(1960年)の3部作の第1作目の作品です。
真実の愛を求め波乱万丈の人生を選んだリンダと家庭を守り夫と添い遂げようとするファニー
2人の女性の人生を通し、女性の本当の幸せとは?を問うた作品です。
世界中の女性が1度は葛藤するだろう…女のサガ
ドラマの舞台となった1900年代の女性といえば
イイ相手と結婚するか或いは悪い相手と結婚をするのか
はたまた、ボルダー(逃げ馬)として後ろ指を差されながら生きるのか…
そんな人生の選択肢が限られていた時代でした。
キャスト紹介
リンダの家族
リンダ・ラドレット /リリー・ジェームズ
ラドレット家の次女 情熱的で神経質な性格 一生に一度の永遠に続く愛を信じています
リリー・ジェイムズの主演作品を紹介しています
マシュー・ラドレット、アルコンリー卿/ドミニク・ウェスト
リンダの父親 風変わりな貴族 娘たちにを学校へ行かせず成人まで屋敷の中に閉じ込めて育てます
セイディ・アルコンリー/ドリー・ウェルズ
リンダの母親 6人の子どもたちを育てています
ルイザ・ラドレット/ビーティ・エドモンドソン
ラドレッド家の長女でリンダの姉
リンダの夫、恋人
トニー・クロイシグ/フレディ・フォックス
リンダの最初の夫、銀行家、後に保守党議員
クリスチャン・タルボット/ジェームズ・フレッシュヴィル
リンダの2番目の夫 熱心な共産主義者
ファブリース・ド・ソヴェテール/アサド・ブアブ
フランスの裕福な公爵
ファニーの家族
ファニー・ローガン/エミリー・ビーチャム
ラドレットの親戚、リンダの従妹で親友
ボルター(ファニーの実母)/エミリー・モーティマー
セイディとエミリーの妹。彼女は何度も結婚したことからボルターと呼ばれています
※モーティマーは監督脚本も務めています
エミリー・ワーベック/アナベル・マリオン
セイディ(リンダの母)の妹でファニーの叔母
デヴィッド・ウォーベック大尉/ジョン・ヘファーナン
エミリーの夫
アルフレッド・ウィンチャム/シャザド・ラティフ
ファニーの夫、オックスフォードの研究員
友人
マーリン卿/アンドリュー・スコット
ラドレット家の隣人の芸術家 リンダと親しく彼女を社交界に紹介したり何かと援助してくれる理解者
彼は、自由奔放な生き方をする若者の支援者のような存在です。
何故か変人役が多いアンドリュー・スコットですがコチラ↓の作品では悪役モリアーティを熱演!
あらすじ
第1話(51分)
1941年 ロンドン・チェルシー
お腹が目立ってきたリンダ・ラドレットは、チェルシーのアパートの屋上でフレンチブルドックの子犬と日光浴をしていました。
そして、気持ちよく陽ざしを浴びたリンダは、部屋へ下りると愛犬と一緒にベッドにもぐります。
するとその時、いきなり爆撃音と共にアパートが崩れ落ちてしまいました…
そこへ、同じく身重のファニー・ローガンが崩壊したリンダのアパートに辿り着きます。
そして、砂埃のまう中、リンダの姿を見つけました。
「空襲じゃ 人は死なない ベッドごと床が抜けて その上に着地したわ」
瓦礫に腰かけていたリンダは、ファニーの姿を見つけると嬉しそうに言いました。
『いとこのリンダ・ラドレッドは、長い間私が愛してやまない人だ。』
ファニーは、爆撃にも動じないリンダを見てそう思いました。
戦間期だったイギリスにも、いよいよ戦火が迫っています。
そのため、チェルシーに残っていたリンダをファニーは迎えに来たのでした。
ファニーは埃まみれになったリンダを連れ、アルコンリーのラドレッド邸へ向かってドライブしていました。
「同情しないでファニー この5ヶ月は本当に幸せだったんだから そんなこと言えるのって まれよ」
”リンダの幸せな5か月間が、彼女の激動の29年の人生に見合うものだったのだろうか…”
ファニーは、運転をしながらそう考えずにはいられませんでした。
やがて、森の中にラドレッド邸が現れます。
ファニーは幼い頃からクリスマスになると、オックスフォードシャーの丘の上にある醜い屋敷を訪れ、リンダの家族と一緒に過ごします。
しかし、リンダのクリスマスといえば、いつも痛々しいものでした。
たとえば…
川で溺れかけたり、安楽死させた愛犬に会いたくて自殺を試みたり、隣人の子どもたちに性教育をして父親からムチで打たれたりとetc…
そんなリンダは、奔放で神経質そして、とても情熱的な人でした。
またリンダ以外にも…
ファニーの叔父でリンダの父親マシューも、とても極端な性格の持ち主なのです。
彼には、好きか嫌いしかありません。
おまけに、その殆どが嫌いなもので
外国人、カトリック教徒、子どもが特に嫌いでした。
そんなマシューは、クリスマスの伝統行事として4匹の猟犬を使い、子どもたちを狩ったり
夜明けには、芝生の上でムチを鳴らす変わり者です。
しかも、彼は学のある女が嫌いで、それ故ファニーは嫌われていました。
ラドレッドの子どもたちは、そんな父に耐え忍ぶ日々を送っていたのです。
第2話(51分)
リンダは、イングランド銀行総裁の息子トニー・クロイシグに恋をし、ファニー、デイビー、マーリンの周囲の反対を無視して結婚を決めてしまいます。
ところが結婚式当日、リンダはトニーとの結婚を後悔していました。
しかし…時、既に遅し
結婚式は滞りなく行われます。
新婚旅行を終えた2人は、ロンドンのブライアンストーン広場にある新居に落ち着くことになり
その後、トニーは父親の銀行で働き下院議員を目指します。
そして、彼の野望はすぐに実現しました。
ところが、ラドレッド、クロイシグ両家ともに価値観が違いすぎて、良好な関係にはなれませんでした。
一方、ファニーはオックスフォードの研究員アルフレッドと再会し、2人はめでたく結婚します。
そして、オックスフォードに新居を構え、ファニーは探し求めていた安全な場所を手に入れたのでした。
ある日、リンダがオックスフォードの新居を訪れます。
彼女は、あんなに嫌がっていたアルコンリーでの2人のおしゃべりを懐かしむほど、結婚生活に苦悩していました。
そして、妊娠の報告をファニーに告げます。
すると
「ウソでしょ 私もよ!」
と2人同時の妊娠に、喜びを分かち合いました。
その後、先に出産を終えたリンダは、産後の回復が遅く体調は不調なままでした。
心配したファニーが病院へお見舞いに行くと
「出産は最悪よ」とリンダの体調は悪そうです。
「名前は決めた?赤ちゃんはどこ?」
ファニーは広い病室を見まわしますが、赤ちゃんの姿はどこにも見当たりません。
「別の部屋で泣き叫んでる。名前はモイラよ」
ファニーは、赤ちゃんの名前を聞いて驚きます。
”それにしても赤ちゃんにモイラと名付けるなんて…”
リンダは、トニーの亡くなった妹の名で、クロイシグ家の人間にするためだと非難します。
そして、彼女は我が子を愛せないと告白しました。
「まだ、産まれたばかりなのに酷いわ」
ファニーには、そんなことを言うリンダがとても信じられません…
その後、ファニーも無事に出産を終えドリーという名の女の子を授かりすっかり夢中になります。
ある日、出産祝いにエミリーとデヴィッドがオックスフォードのファニーの家を訪れました。
すると、エミリーはリンダの様子を報告します。
彼女の体調は余り良くなく、医師から”また妊娠すれば死ぬ”と言われたのです。
「やめてくれ リンダがいない世界なんて」
デヴィッドは、悲しくなり話を遮ります。
”デヴィッドの言う通りだわ”
ファニーは、リンダのことがとても気がかりでした。
その後、ファニーがリンダの屋敷を訪ねると、彼女は寝室にこもってしまい
モイラから逃げていました。
モイラの鳴き声が屋敷中に響いています。
するとその時、いきなり寝室のドアが開きマーリン卿が現れました。
彼は、リンダの様子を見ると怪訝な顔をして
「何してる?」
と訊ねます。
「動物たちに本を読んでる」
リンダの返事を聞いたマーリンは怒ったように
「バカ言うな 立て!早くしろ外に出るぞ」
と怒鳴って出て行ってしまいます。
その後、リンダはマーリンによって社交界デビューし
“社交界の花”になったのです。
第3話(52分)
パリ サンジェルマン
リンダは、有効期限の切れた切符のせいでファニーの元へ帰れず途方に暮れ、パリ北駅で大声で泣きわめいていました。
そこへ、見ず知らずの紳士が現れ、リンダに興味を抱いたのか声をかけてきました。
そして、彼はまるで迷子の猫を拾うようにリンダを駅から連れ出します。
リンダは戸惑いますが、彼はホテルの部屋を用意しランチまでご馳走したいと言います。
そして、1時間後に迎えに来ると言い残し去って行きました。
疲れ切っていたリンダは、ベッドで深い眠りについてしまいます。
しばらくして、リンダは電話のベルで起こされました。
電話は、先ほどの紳士からです。
彼は、リンダが現れず待ちくたびれていました。
ところが、リンダは“男は懲り懲り”と身に染みていて
紳士を無視してホテルから逃げるつもりです。
再び電話が鳴っています。
しかしリンダは、窓からバッグを投げ捨てると雨樋をツタって難なく脱出してみせたのです。
そして、バッグを拾うと路地裏を歩き出しました。
ところが、彼女の後ろを車がついてきます。
「マダム パリ北駅に行くならせめて送らせてくれ」
あの紳士の声です。
「残念だ」
リンダは、彼の車で駅まで送ってもらうことにしました。
紳士は名残惜しそうです。
「何が残念なの」
リンダが訊くと
「うまい店に連れて行きたかったのに」
と彼が優しく言います。
その時、リンダのお腹の音が鳴ってしまいます。
彼は愉快そうに笑いました。
「途中にあるなら寄ってもいいわ」
「あーあー」
そう頷くと彼はいきなり車のスピードを上げました。
すると、リンダの帽子が飛ばされてしまいます。
「気にするな 酷い帽子だ」
こうしてリンダはファブリース公爵と運命的な出会いをしたのです。
続きは本編で!
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勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
リーリー・ジェイムズと言えば、凛とした上流階級の女性の役が多いように思いますが、
本作では、永遠の愛を求め自由奔放に生きたリンダを熱演しています。
ファニーが自分勝手なリンダに腹を立てながらも、彼女が戻ってくるとついつい許してしまう…
そんな憎み切れない可愛らしいリンダを演じていました。
良かった~
そんな永遠の愛を求めたリンダは、若くしてこの世を去ってしまいます。
自分勝手に生きながらも、実に多くの人に愛されていました。
第1話でファニーが”リンダの幸せな5か月間が、彼女の激動の29年の人生に見合うものだったのだろうか…”と考えるシーンがあります。
自分勝手に生きたように見えて、幸福だったのはたった5ヶ月!
そして、最愛の人との愛の結晶を身籠り、死を覚悟して彼女は出産に挑んだに違いありません。
結局、リンダとファブリースは、子どもを抱く事もなくこの世を去ってしまいますが
リンダにとっては、正に永遠の愛を成就させ忘れ形見をこの世に残したわけで
短くも夢を叶えた幸せな生涯だったのではないでしょうか…
そうです!女性にとって“この生き方がしあわせなんだ”なんて答えは1つではないのです。
そして、この作品のラストに自由奔放に生きたボルダーのとても印象的な言葉があります。
そのボルダーの悟りとは…
”出会うたびにいつも最愛の人だと思う!毎回、毎回…”
そんなオチで締めくくられます。
最後は、子どもや孫たちに囲まれ、紆余曲折を経た実母と養母、そして娘が揃って笑い合えるなんて
なんて素敵なんでしょう!