今回紹介するドラマは 薔薇の名前
2019年イタリアRai1で放送された歴史スリラー
原題:イタリア語:Il nome della rosa 英語:The Name of the Rose
全8話(1話49分~55分)
原作:イタリアの作家ウンベルト・エーコの1980年のデビュー小説『薔薇の名前』
原作は難解な歴史ミステリー
原作者のエーコはイタリアの中世学者、哲学者、記号学者でもあり哲学では学位を取得しています。
そんな彼のデビュー作は、世界中で5000万部以上を売り上げ、いきなり世界的ベストセラーに!
エーコの才能がエグイ~
しかし、この作品…
1327年のイタリアの修道院を舞台にした歴史殺人ミステリーであり、フィクションにおける記号論、聖書分析、中世研究、文学理論を組み合わせた知的ミステリー
と紹介されているだけあって
清貧論争に異端審問、皇帝と教皇の対立などなどカトリック教会の黒歴史が・・・
当然、ヨーロッパの歴史や宗教に疎い私には、非常に分かり難くとっても難解な作品でした。
ところが、そんな小難しさの中に、エーコは読者がとっつき易いように考えたのか?
主人公のフランシスコ会修道士をバスカヴィルのウィリアムと名付けています。
分かる人には分かる!
そうです!
まるでシャーロック・ホームズを彷彿させる名前ですね。
ヒントはこちら↓
実はこの作品には、ジャーロック・ホームズの他にも
アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスへのリスペクトが散りばめられていて、
デビュー作に対するエーコの熱意が感じられます。
キャスト紹介
前回の紹介ドラマ【マクストン・ホール】ですっかりダミアン・ハルドンに魅了された私は
彼の出演作を検索したところ【薔薇の名前】がヒット。
しかし、私にとって【薔薇の名前】と言えば
ジャン=ジャック・アノー監督の1986年の映画。
当時は、ショーン・コネリーとクリスチャン・スレーターがウィリアムとアドソを演じていました。
その感想は、薔薇の名前って…何の事?でもまあ、キャスティングも良かったし、サスペンス作品として楽しめた映画でした。
では、今回のリメイク版のドラマは如何かと
きっと映画版よりも詳細に描かれているのでは…謎が解けるかな!と期待が膨らみます。
しかし、ダミアンがアドソか~チョット嫌だな…との思いがよぎるが
何と、マイケル・エマーソンが院長役で出演しているじゃないですか~
彼のチョットとぼけた演技が好きなんですよね。
修道院関係者
バスカヴィルのウィリアム/ジョン・タートゥーロ | フランシスコ会修道士 元審問官で探偵並みの洞察力を持つ |
ベルナール・ギー/ルパート・エヴェレット | ドミニコ会の異端審問官 |
メルクのアドソ/ダミアン・ハルドン | ウィリアムの弟子でベネデクティス修道士 |
ヴァラジーネのレミジオ/ファブリツィオ・ベンティヴォーリオ | 修道院の地下室管理人 |
サルヴァトーレ/ステファノ・フレージ | 修道院の製紙工でレミジオの友人 |
アッボーネ/マイケル・エマーソン | フォッサノヴァ修道院の院長 |
ホルヘ・デ・ブルゴス/ジェームズ・コスモ | 盲目の長老 |
マラキーア/リチャード・ザメル | 修道院の文書館長 |
アランデルのベレンガーリオ/マウリツィオ・ロンバルディ | 修道院の文書館長補佐 |
ベンチョ/ベンジャミン・スタンダー | 修道院の修辞学と飾り文字の研究家 |
その他キャスト
アンナ(マルゲリータ)/グレタ・スカラーノ | ドルチーノとマルゲリータの娘 |
オックの少女/アントニア・フォタラス | オック地方出身の孤児 アドソを信頼し彼を追いかけて来るが オクシ語しか話せず言葉が通じない |
あらすじ
”キリスト紀元1327年 ヨーロッパ
後の神聖ローマ皇帝ルートヴィッヒ4世が政教分離を主張
フランス人教皇ヨハネス22世は彼を破門
神が授けた教皇の権威は皇帝に勝るとした
両者の軍はイタリアで衝突する…”
両軍の兵士が死闘を繰り広げている中、今にも息絶えそうな兵士に必死に蘇生を試みる青年兵士がいた。
そして、青年兵アドソは間もなく息絶える兵士に祈りを捧げ始める。
「主よ 永遠の死から救いたまえ あなたが火をもって裁き 天地が動く その日に
私は震え 恐れます」
その時、アドソが背後の気配に気づき振り向くと
彼の目前で敵兵が倒れた。
「父上」
間一髪のところ、アドソは父に命を救われたのだ。
「お前も戦いを学ぶんだ 彼は死んでる」
ハッとして兵士を見ると、彼は既に息絶えている。
「行くぞ」
そう父は檄を飛ばし刀を振り上げると戦いの中へ消えて行った。
アドソもヘルムを被り意を決すると、父の後へ続き戦いの中へ向かって行く。
戦況は、両軍一歩も引かぬ様相だったが
教皇軍の数馬の騎兵が撤退していくのが見えた。
こうして、イタリアでの衝突は皇帝軍に軍配が上がった。
しかし、激しい戦場あとには、多くの兵士の屍が残され…
アドソは絶望感に苛まれ空を仰いだ
“罪深い人生も終わりに近づいた 若き日に立ち合った驚くべき数奇な事件をこれから語ろう
私はベネディクト会の見習い修道士 父は皇帝軍を率いる将軍で
息子に修練よりもイタリアでの参戦を求めた 正しい戦争だと父は言う
だが正しい戦争などない 殺人で世界が変わるものか
当時 私は17歳 まもなく人生が激変することになる”
続きは本編で!
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(配信は投稿時のものとなります)
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
このタイトルの『薔薇』が何を指しているのか?という謎は、今までも注目されてきたようです。
実際、私が映画版を観た時に感じた“薔薇って何のこと?”
という疑問を多くの人も思っていた!という訳です。
そこで、独自考察してみたいと思います。
謎のタイトル薔薇の名前とは…
Wikipediaによると(参考:Wikipedia:薔薇の名前)
エーコは「完全に中立的なタイトル」を見つけようとしたとありました。
- エーコは小説を書き終えたとき、急いで10ほどの名前を提案し、数人の友人に1つを選ぶように頼み、彼らは『薔薇の名前』を選んだ。
- エーコは中立的なタイトルである『メルクのアドソ』を望んでいたが、出版社に拒否され、『薔薇の名前』というタイトルは「ほとんど偶然に思いついた」という。
- 『薔薇の名前』のあとがきで、「薔薇は象徴的な存在であり、非常に意味が豊かであるため、今ではほとんど意味を失っている」ため、タイトルを選んだと主張している。
- この本の最後の行「Stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus」は、「昔のバラは名前だけが残っている。私たちは裸の名前を持っている」と訳され、一般的な意味は、過去の美しさは消え去り、私たちは名前だけを持っているということである。
そして、この小説では、失われた「バラ」は、アリストテレスの喜劇の本(今では永遠に失われた)、破壊された美しい図書館、または今は亡き美しい農民の娘として見ることができる。「昨日のバラは名ばかり、我々はむなしい名前しか持たない」とも訳されている。
そこで、このドラマでは確信のセリフが
ラストのウィリアムとアドソの別れのシーンで出て来ます。
「薔薇の美しさや色香りがあせたとき言葉だけが残る薔薇の名前が」
何の事?と思ったタイトルは、実はとっても奥深く哲学的なタイトルだったわけですね!
そこで、ここからは独自の考察をしてみます。
エーコは大学生の時に神を信じることをやめ、カトリック教会を去っています。
作中も、欺瞞に満ちた教皇や修道士たちの姿が描かれていました。
故に
薔薇とは…キリスト教を利用し欲に溺れたカトリック教会のことであり
「カトリックのバラは名ばかり、信者はむなしい名前しか持たない」と表現したかった!
皆さんはどう感じましたか?
やっぱり、ダミアン・ハルドンの演技は素晴らしかったな~
クリスチャン・スレーターのアドソとは違う性格で良かった!