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【映画:時をかける少女(1983)】大林宣彦監督の尾道2作目は原田 知世引退の危機を救う名作だった

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今回紹介する映画は 時をかける少女

概要

1983年日本公開 監督:大林宣彦 脚本:剣持亘(転校生、さびしんぼう)

大林宣彦監督と言えば『尾道三部作』(他の2作は『転校生』・『さびしんぼう』)

【時をかける少女(以下:時かけ)】はその第2作目。

撮影の多くは、広島県尾道市や近隣の竹原市で行われ、地元の人々もエキストラ出演しています。

この尾道三部作は、バブル期の多くの日本人をノスタルジックに浸らせ、

現在に至る、ロケ地巡礼の先駆けの作品となりました。

主人公が下駄を履いてカランコロン鳴らすところがイイ~

上映時間:104分

原作:筒井康隆のジュブナイルSF小説『時をかける少女』の最初の映画化作品で、彼は後に、何度も映像化、アニメ化されたこの作品を「銭を稼ぐ少女」と語っています。上手い!

【予告篇】『時をかける少女』

原田知世に引退プレゼントとして製作された映画だった

大林監督と角川春樹社長がタッグを組み、薬師丸ひろ子、原田知世をトップアイドルにした手腕が凄い!

そこで、簡単に概要を纏めてみました。

1970年代〜1980年代に「アイドル映画の第一人者」と称されていた大林監督は、角川事務所の春樹社長と薬師丸ひろ子主演の【ねらわれた学園】(1981)を大ヒットさせ、彼女のアイドルとしての地位を確立させます。

この作品も大林ワールド炸裂で、私も好きな作品!

またその頃、角川事務所はポスト薬師丸ひろ子を求め「角川映画・東映大型女優一般募集オーディション」を開催、そこで春樹社長の目に留まった原田知世は、特別賞を受賞し芸能界デビューを果たしています。

グランプリは渡辺典子でした

そんな彼女に期待をかけていた春樹社長は、薬師丸ひろ子主演のヒット映画をテレビドラマ化した『セーラー服と機関銃』『ねらわれた学園』のヒロイン役に抜擢しますが、ドラマの人気は期待したほど伸びず…

その結果、春樹社長はまだ若い原田知世の将来を思い、

引退の花道に「1本だけ引退記念に映画を撮ってやりたい」と大林監督へ相談し【時かけ】が製作されました。

ところが…

皮肉なことに引退記念のはずが、原田知世を一躍トップアイドルにのし上げる大ヒット作品に!

人生って本当に面白いですね~

その後、原田知世主演映画が何本も製作されたのは、皆さんご存じの通りです。

おススメ度:★★★★☆ 原作を純文学と捉えて『時の壁』に阻まれた悲恋のSFラブストーリー作品に。主役の2人には、セリフをワザと“棒読み”させたり、和子のやけに丁寧な話し方など、大林監督の拘りが不思議なポエム感を演出、その詩情的な作風と尾道の風景で、観客をノスタルジックな感情へ引き込みます。
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キャスト紹介

当時の角川事務所のアイドル映画に、欠かせない俳優が高柳良一でした。

彼は、薬師丸ひろ子主演の【ねらわれた学園】で関 耕司役でデビュー以後、角川映画でヒロインの相手役を多く務めていますが、彼の役者期間は…

何と、1981年から大学卒業までの5年ほどだったんですね。

卒業とともに希望通りに日本放送へ入社し順調に出世された模様です。

もしかして…役者を辞めたキッカケが、ハードな撮影だった【時かけ】だったかもしれない…

と思えるほどキツイ撮影期間だったようです。

芳山和子/原田知世高校2年生 
実験室でラベンダーのような匂いのする薬品を嗅いでから
「タイムリープ」の特殊能力を得ることになり不安な日々を過ごす
深町一夫/ 高柳良一和子のクラスメイトで物静かで落ち着いた性格 和子の良き理解者
堀川吾朗/ 尾美としのり和子のクラスメイトで幼馴染 休みの日などは家業の醤油屋を手伝っている
福島利男/ 岸部一徳和子の高校の国語教師
立花尚子/根岸季衣和子のクラス担任で福島に好意を寄せてい
深町正治/上原謙一夫の祖父 息子夫婦を交通事故で亡くし生き残った一夫を養育している
深町たつ/ 入江たか子一夫の祖母 生き残った一夫を愛情を持って育てている

あらすじ

“ひとが、現実よりも、理想の愛を知ったとき

それは、ひとにとって、

幸福なのだろうか?

不幸なのだろうか?”

高校1年生の芳山和子は、学校のスキー教室の夜にゲレンデで幼馴染の堀川吾朗と話していました。

スキー教室の時は1年生

「不思議な星空 あんまりきれいすぎて 何だか怖い きっといつか あの星のどこかから 私の素敵な男性がやってくるんだわ」

和子があまりにもきれいな星空に、ロマンティックな気分に浸っていると

「チェッ 女の子ってホント始末に負えないロマンチストでやんの あれはね たんに水素とか炭素とか色んな元素がガス状になって燃えてんだよ」

現実派の吾郎は、雪を拳ほどに固めると和子の背中めがけて投げつけます。

「もう イジワル吾郎ちゃん」

ロマンチックな気分を害され、和子はふくれっ面になります。

「化学は時として非常である」

五郎が自信たっぷりに言うと

「それ誰が言ったの?」

今度は、和子が悪戯っぽく言いかえしました。

「わたくし、堀川吾郎大博士 さぁ もう行こうよ 雪まつりのパレードに遅れるとさぁ 福島先生たち またうるさいからね」

「ふ~だ そんなに現実的で女の子の気持ちが分かんないようじゃ 吾郎ちゃんには永遠に恋人なんか」

和子が後ろ歩きから前へ向きなおった瞬間、突然何かにぶつかります。

驚いた和子の目の前には、長身の青年が彼女を見下ろしていました。

そして、彼は和子に優しく微笑かけます。

一瞬…和子は、誰?と不思議そうな顔をしますが…

「深町君?」

彼女は、以前から青年を知っていたかのように名前を呼んでいました。

その時

「どうした?だれ?」

吾郎が追いつき、その青年に気づくと

「なんだ 深町か こんな所で何してんだよ」

と彼に馴れ馴れしく言いました。

「うん あんまり星がきれいだから」

同級生の深町一夫が夜空を見上げます。

「バカバカしい まったく みんな乙女チックなんだから さぁ 急いだ急いだ」

吾郎はロマンチックなムードをかき消すように、掌を1つパ~ンと打つと

急いで集合場所へ向かって行きました。

「さあ行こう」

和子も一夫の手を引き、吾郎の後に続きました。

続きは本編で!

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只今こちらの動画配信サイトでご視聴頂けます

(配信は投稿時のものとなります) 

hulu 

勝手に私見考察

ここからはネタバレを含みます

大林監督はこの作中で、高校生にそぐわないセリフを原田知世に言わせ、あえて時代錯誤な演技指導をしています。その狙いは、主人公の和子を「竹久夢二の絵のような、現実にはいない少女」にするためでした。

そして、和子と一夫には”味のある棒読み”をさせたり、大正ロマンチシズムの世界に当てはまる演技をさせ、一方で吾郎役の尾身としのりには、絵空事にならないように、作品のヘソをきっちり抑えて欲しいと現実的な演技を要望しています。

そんな監督の意図を知らず、当初この作品を観て角川事務所のアイドルって演技ヘタ~なんて思っていた…私はいったい

また、上記の尾身としのりは、よほど大林監督の信頼が厚かったのでしょう、彼は尾道3部作すべてに出演し、『転校生』『さみしんぼう』の2作で主人公を演じています。

そして、年月を経て、もう一度この作品を観てみると…

残酷な結末と知りながらも、一途に真実を知りたいと一夫に懇願し時空へタイムリープした和子。

過去を彷徨いながら、一夫は存在しなかったことを知り不安に苛まれ“時空の亡者”になりかけるとき、一夫が何処からともなく現れ、和子を土曜日の理科室へと導き、和子と一夫の別れのシーンへと繋がります。

この時空を彷徨う一連のシーンでは、アニメと映像を合成した特撮に、子供の頃の記憶を辿るシーンや写真を切り貼りしたようなカットの連続、そして、古びた掛け時計や尾道の風景などをモノクロやセピア色で表現し、残酷な真実に気づいていく和子の不安げな表情を細やかに描写していました。

役者にセリフで全てを言わせるのではなく、観客に映像や表情で表現するテクニックは、CMデレクターとして数々のヒット作を生み出した監督ならではの素晴らしい技術だと思います。

まだ若い年代の不安定で純粋な心がより胸に響き感動を誘いました。

そして、ラストシーン近くでの、一夫の記憶を失った老夫婦の何とも言えない寂しげな描写は、当初脚本になかったシーンでした。

しかし、大林監督が「家族を亡くした老夫婦の感慨」を加えると拘り、祖母の哀愁的なアップシーンはとても印象的です。

これがまた、老夫婦の胸中を想像させ堪らない

原田知世への記念映画のはずが…

大林監督の拘りと計算しつくされた演出、妥協を許さなかったハードな撮影で、【時かけ】は原田知世の大出世作に!

いや~凄い監督ですね!

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