今回紹介する映画は ロード・オブ・ザ・リング3部作
- 【ロード・オブ・ザ・リング】2001年公開 アメリカ、ニュージーランド合作 (上映時間 2時間58分)
- 【ロード・オブ・ザ・リング 2つの塔】2003年公開 (上映時間 2時間59分)
- 【ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還】2004年公開 (上映時間 3時間21分)
(以降はロード・オブ・ザ・リング=LOTR)
監督、共同脚本:ピーター・ジャクソン
原作:イギリスの文献学者、作家、詩人、イギリス陸軍軍人であるJ・R・R・トールキン(ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン)による長編小説【指輪物語】
このブログで【LOTR】の前日譚となる【ホビット】3部作を紹介していますが、公開日順では、【LOTR】の方が古い作品です。
しかし、LOTRを深く理解して観るためにも、【ホビット】3部作を先に鑑賞してから視聴される事をお勧めします。
原作【指輪物語】の映像化は不可能と言われ屈折する事30年!
ビートルズ版、巨匠監督による企画、アニメ版等々挑戦してきた映画製作者たち。
いずれも計画段階で余りにも”壮大”すぎるストーリーに断念してきました。
アニメ化に至っては、予算がかかり過ぎ品質が不均一で中途半端に終わってしまい、ファンの不評を買ってしまいました。
そうです!LOTRは余りにも壮大すぎて、莫大なお金がかかってしまう作品なのです。
しかし、近年のVFX技術等の発展で映像化の可能性が出てくると、アメリカの製作会社ミラマックス映画は、それほど有名では無かったピーター・ジャクソン監督を起用し、完全実写映画化に挑戦しました。
しかも当時のジャクソン作品は、ホラー作品が殆どでしたから、ファンタジー大作に抜擢したミラマックスの先見の明は凄いですね。
ところが、膨大な作業量でやはり資金難に陥り失敗に終わりそうになったとき、ニュー・ライン・シネマが製作を引き継ぎ完成まで至る事が出来たのです。
今回のブログでは、監督を始め映画製作者たちの作品にかける情熱、拘り…
この世界観大好きな私の勝手な思いを綴っていきたいと思います。
ストーリ解説はこちら↓
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原作者J・R・R・トールキンが創り上げた世界“中つ国”
J・R・R・トールキンは、1937年に児童書【ホビットの冒険】を出版すると、大人からも好んで読まれ、出版社から続編の執筆依頼がされるほどの人気作品になりました。
トールキンは、この出来事に刺激され上梓したのが、彼の作品で最も有名な著書【指輪物語】でした。
この【指輪物語】は神話、宗教、トールキンの戦争体験の影響を強く受けた叙事詩的小説です。
特に、アングロサクソンの古伝承の『ベーオウルフ』、北欧神話の『エッダ』、『ヴォルスンガ・サガ』、ケルト神話やフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』などが挙げられます。
また、文献学者であり大学で教鞭を執っていたトールキンは、約15の人工言語を発明し、その中の一つにエルフ語がありました。
こうして、神話や民族言語から影響を受けたトールキンが創造した中つ国とは…
歴史上におけるアトランティス崩壊後の遠い昔の物語として描かれ、しかもこの【LOTR】は、中つ国の歴史の中の最後の一篇でしかないのです。
多くの民族言語を研究したトールキンならではの世界観で完璧に作り上げられた架空の世界のことなのです。
興味のある方はこちらも↓どうぞ
そして、原作の三部作は映画の成功も相まって、世界史上のベストセラートップ10にランクインし、
その部数【旅の仲間】1億5500万部、【二つの塔】1億5000万部、【王の帰還】1億4000万部が世界中で読まれました。
ピーター・ジャクソンは大博打を打った!
ピーター・ジャクソンが初めて【指輪物語】を見たのは、何とラルフ・バクシによる1978年のアニメ映画【指輪物語 (前編)】でした。
この中途半端に終わってしまった作品を「この映画を楽しみ、もっと知りたいと思った」と彼は話しています。
その後、原作を読んだのは17歳の時、長時間の列車移動の暇つぶしに読んで大きな感動を覚えたそうです。
そして、1995年【さまよう魂たち】を完成させると、新プロジェクトだった『LOTR』に興味を抱き、【ホビットの冒険】と【指輪物語】を元にした2本の作品を製作するために交渉を開始します。
その後、紆余曲折を乗り越えて完成された作品は、総製作費2億8500万ドル、プロジェクト全体で8年をかけて完成されたのでした。
そしてその作品は、世界中で称賛されアカデミー賞では30回ノミネートされ、17回受賞しています。
特に【王の帰還】では、11部門でノミネート、その全てで受賞を果たし、【ベン・ハー】、【タイタニック】に並び最多受賞数を獲得しました。
では、成功までの紆余曲折を纏めてみました。
企画段階でのピンチ
ここまでの、ジャクソン監督の道のりは実に大変なものだったと思います。
何故なら、ニュージーランドで3部作を一挙に撮影し、また自身のスタジオでその全てを製作したため、失敗は絶対に許されなかったのです。
もしも、1部目の公開でコケていたら…
そう考えると…ジャクソン監督はかなり大胆で、大博打を売ったものです。
製作までの遠い道のり
まず、企画段階では、当初2部作で進められていました。
何と、ジャクソン監督は、この2本の映画の脚本に1年以上もの期間をかけています。
ところが、当初の予算より大幅に膨らんだため製作会社のミラマックスは、2本から1本の作品への変更を決定してしまいます。
その事でストーリーの大幅カットを余儀なくされ、危機感を感じたジャクソン監督は尻込みしてしまいます。
その後、ミラマックスは契約を解除する事になり、ジャクソン監督は4週間にわたってハリウッドを周りニュー・ライン・シネマとの契約に漕ぎつけました。
すると今度は、ニュー・ライン・シネマから全3巻の原作をなぜ2本の映画にするのかと、3部作として製作することを要望されます。
そこで共同脚本家のジャクソン、ウォルシュ、ボウエンは、直ちに新しい3つの脚本に書き直す作業着手したのでした。
ジャクソン監督の拘り
3部作の撮影期間は、1999年10月11日から2000年12月22日までの438日にわたり、ニュージーランドの保全地域と国立公園内の多数の場所で同時に行われました。
有名な話では、ホビット庄のリアル感を出すため、植物を本当に成長させる為に、ニュージーランド軍は撮影の数ヶ月前からホビット庄建築を始めていました。
そして、原作の世界観を忠実に映像化する為、トールキン作品の挿絵画家のアラン・リーとジョン・ハウを美術プロジェクトに加え、彼らのイラストが全てのベースとなって、原作に忠実な中つ国を作り上げています。
ジャクソン監督は、母国ニュージーランド愛も強く、撮影は全てニュージーランドで行い、俳優陣も、ニュージーランド、オーストラリア出身の俳優を多く登用している事も特徴でした。
そして、ウェタ・ワークショップ(監督所有のスタジオ内の部門)では、鎧4万8000個、弓500本、矢1万本の小道具を製作し
また、ホビットの足の義肢を1800組、さらに付け耳、鼻、頭、そして1万9000着の衣裳を作り上げました。
その様子が分かる動画が↓こちらです。全編英語ですが、スタッフの苦労が伝わってきます。
WETAデジタルを最大限に活かした技術力
モーションキャプチャーでリアルなゴラムを実写化。
ここまでリアルな表情で映像化したモーションキャプチャー技術は初めてでした。ゴラムを演じたアンディ・サーキスの献身的な演技の賜物ではないでしょうか。
アナログとデジタル、特撮を上手く組み合わせた映像化
小人のホビットのスケール感を映像化する為に、強制遠近法を使って馬車のシーンや食卓シーンは撮影されました。その為、ガンダルフとフロドの会話の違和感を感じさせないシーンを完成させています。
また、数メートールのミニチュア、セットを製作しVFXと組み合わせて裂け谷やミナス・ティリスのシーンを映像化しています。
そんな撮影シーンのホンの1部をこちらで↓
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勝手に私見考察
このようにして、壮大なスケールの原作に果敢にチャレンジしたジャクソン監督こそ、作品で描かれていた不屈の精神、仲間との信頼、裏切り‥を体現していたのではないでしょうか。
紆余曲折の経験を経て、ファンタジー作品の金字塔を叩き出し、未だにその記録は破られていません。
そして、ジャクソン監督の強かさは、この【LOTR】をきっかけにWETAデジタルを一流企業までにした事です。
WETAの最新技術MASSIVEによって、大軍の兵士それぞれにAIを組み込みランダムな動きをもたらし、戦闘シーンのリアルな映像を作り出します。
これはジョージ・ルーカスには出来ませんでした!
その後、このMASSIVEは【トロイ】【アベンジャーズ】にもレンタルされ戦闘シーンの映像化の躍進に繋がりました。
こうして、監督自身はこの大作で大成功を収めますが
如何せんその後、大人の諸事情でジャクソン監督は、訴訟問題を抱えてしまいます。
そのためでしょうか、折角の大作をジャクソン監督は、楽しんで観る事が出来ないそうです。
正に!成功の光と影…
それでも不屈の精神で、その後【ホビット】3部作を完成させたのです。
ジャクソン監督は、本当に強靭な精神力の持ち主ですね。