今回紹介するドラマは ジェイン・エア
ジェイン・エア解説
原作の【Jane Eyre】(1847年刊)は、イギリスの作家シャーロット・ブロンテの長編小説です。
実は、原作者のブロンテ自身が波乱万丈の人生を送っていました。
【Jane Eyre】は正に彼女の実体験をもとに書かれた名作なのです。
物語に出てくる劣悪な環境の“ローウッド学院”とは、彼女が入学した寄宿学校“カウアン・ブリッジ校”がモデルです。
このローウッド学院と同様に“カウアン・ブリッジ校”での劣悪な環境下で、ブロンテの2人の姉が結核で亡くなっていました。
そして、ブロンテはこの悲劇をジェインの親友ヘレンの死として作品の中で描いています。
また、ブロンテが家庭教師として各地を転々とする中で18世紀の昔話が彼女の耳に入りました。
その昔話とは…「この屋敷で正気を失った妻を閉じ込めていた」というもの。
そうです!この昔話はソーンフィールド邸のロチェスター夫人のモデルとなった訳です。
2004年に、問題のお屋敷ノートン・コンヤーズ・ハウスで調査が行われ、実際に塞がれた階段が発見されたそうです。何と、昔話が本当だったことが裏付けされました。
こうして執筆された物語は、自立した女性や身分の差を超えた自由恋愛と結婚が描かれ、当時のヴィクトリア朝の社会では、かなり過激で大反響を呼んだそうです。
そして発刊から100年経った現在でも、ジェイン・エアは何度も映像化されています。
- 1943年の映画ー出演:オーソン・ウェルズ、ジョーン・フォンテイン
- 1970年の映画ー出演:スザンナ・ヨーク、ジョージ・C・スコット
- 1983年のTVドラマー出演:ティモシー・ダルトン、ズィーラ・クラーク
- 1996年の映画ー出演:ウィリアム・ハート、シャルロット・ゲンスブール
- 2006年のTVドラマー出演:ルース・ウィルソン、トビー・スティーブンス
- 2011年の映画ー出演:ミア・ワシコウスカ、ミヒャエル・ファスベンダー
今回は、イギリスBBC製作の2006年度版TVドラマを紹介しています。
2006年イギリスBBC Oneで放送されたこの作品は、エミー賞やゴールデングローブ賞など数々の賞にノミネートされ高い評価を受けたTVドラマ(全4話)です。
♦スポンサーリンク♦
只今こちらの動画配信サイトでご視聴頂けます
(配信は投稿時のものとなります)
キャスト紹介
原作を随分前に読んだのですが…重苦しい物語です。ブロンテ姉妹の特徴でしょうか…(嵐が丘も暗い…)
そんな重苦しい物語の中で、今作のエドワード・ロチェスター役のトビー・スティーブンスがイイんです。
孤高で皮肉屋なロチェスター氏を時にコミカル、時にロマンチストに演じています。
これがまた様になり過ぎ!
物静かで堅物なジェインとは対照的な存在で、ストーリーに硬軟のテンポが出来ています。
ジェイン・エア/ルース・ウィルソン、ジョージーヘンリー(幼少期)
主人公。不幸な境遇で育つも自力で人生を切り開く自立した女性。故に頑固な一面もあります。
エドワード・フェアファックス・ロチェスター/トビー・スティーブンス
ソーンフィールド邸の当主で貴族。愛人に押し付けられた女児アデルの家庭教師としてジェインを雇います。
現実から逃げているロチェスター氏は、長旅ばかりしていましたが、ジェインが家庭教師になったことで、ソーンフィールド邸に滞在するようになっていきます。
フェアファックス夫人/ロレーヌ・アシュボーン
ソーンフィールド邸の家政婦
リード夫人/タラ・フィッツジェラルド
亡き夫の遺志を受け、嫌々ジェインと子供たちと一緒に育てますが、ジェインを嫌い虐待した挙句にローウッド学院へ送ってしまいます。
ヘレン・バーンズ/ヘスター・オジャーズ
ローウッド学院で出会った親友。ジェーンの人生に強い影響を与えますがローウッド学院の劣悪な環境で肺炎に罹り亡くなってしまいます。(1943年の映画版ではエリザベス・テイラーが演じていました)
あらすじ
悲しい過去
孤児となった幼いジェイン・エアーは叔父の家に引き取られました。
しかしジェインの幸せな生活は、優しかった叔父が亡くなったと同時に終わりを告げます。
まだ幼いジェインを叔父の妻リード夫人と3人の子供達が虐待し始めたのです。
それでも芯の強いジェインは必死で耐えていました。
ところが、そんなジェインに我慢ならないリード夫人は、ジェインを寄宿制のローウッド学院へ入れてしまいます。
しかし、このローウッド学院の環境は劣悪な上、ジェインは教師から“嘘つき”とレッテルを貼られ体罰を受けてしまいます。
そんな辛い日々の中で、ジェインにヘレンという親友が出来ました。
ヘレンは、反抗心を抑えてここで学べばいつか道は開ける…
だから、頑張りましょうとジェインを励ましてくれます。
「私達は教師になるんでしょ。どうすればいいの?」とヘレンに聞くと
「広告を出すのよ」とヘレンは大胆な事を言ってジェインを驚かせました。
その頃、ローウッド学院の劣悪な環境下で多くの子供達が病に罹っていました。
ある夜、目を覚ましたジェインは隣のベッドで寝ているはずのヘレンがいない事に気づきます。
そして、ヘレンを捜し回ったジェインは、病気の子供達の部屋でヘレンの姿を見つけます。
彼女は、肺炎に罹っていたのです。
その後間もなく…ヘレンは亡くなってしまいました。
自立への第1歩…ソーンフィールド邸へ
それから、ジェインはヘレンの言葉通り勉強に励み、ローウッド学院の教師になり2年が経っていました。
ある日、家庭教師の広告を出していたジェインの元へ“ソーンフィールド邸”から手紙が届きます。
手紙を受け取ったジェインはローウッド学院に別れを告げると、早速ソーンフィールド邸へ向かいました。
しかし、その旅路は丸1日を要し、ソンフィールド邸に到着したのは夜遅くになってからでした。
案内されたソンフィールド邸はどこか不気味で、ジェインは薄気味悪さを感じます。
ところが、案内された台所へ入ると一変…待っていたフェアファックス夫人から暖かい歓迎を受けました。
夫人は、食事を用意してくれ「暖かい部屋でのお食事は久しぶりでは?」と長旅の労をねぎらってくれましたが
「ええ、8年ぶりです」とジェインの意表を突いた返事に
夫人は笑いながら「旦那様にお聞かせしたいわ。ユーモアがおありなの」
と当主のロチェスター氏の話を始めました。
フェアファックス夫人の話では、ロチェスター氏は人づきあい悪く長旅ばかりしているようです。
翌朝
目覚めたジェインは、窓外に広がるソーンフィールド邸の庭園にすっかり魅了されました。
彼女がソーンフィールド邸を散策していると、高窓の赤い布が目に留まります。
するとそこへ、フェアファックス夫人がやって来ました。
そこでジェインは、あの部屋に誰がいるのかと夫人に尋ねますが…
「あそこには誰もいませんよ。洗濯係のグレースでしょう」
とフェアファックス夫人は答えます。
ところが…
その後もジェインは、あの高窓から赤い布が揺れているのを何度も見かけるのでした。
あの部屋はいったい…ジェインの心に何かが引っかかります。
その後ジェーンは、郵便局へ向かうため川沿いの道を歩いていました。
しかし、空はどんよりとして濃い霧が出ています。
すると、霧の中から馬の蹄の音と男性の声が聞こえて来ました。
そして霧の中から突然、1匹の大きな犬がジェインのすぐ横を走り去って行くと
続いて、目の前に馬が現れジェインはいます踏まれそうに…
あわや寸前で乗り手の男が落馬し、ジェインは難を逃れる事が出来ました。
落馬した男は、イライラした様子で「魔女め。とんだ災難だ」と怒りをあらわにします…
そして、その男は足を酷くくじいてしまい、ジェインの肩を借りて何とか馬に跨ぐ事が出来ました。
男はさんざんジェインに嫌みを言うと、再び犬を連れて去っていきました。
用事を済ませ帰宅したジェインに
「旦那様がお戻りよ」とフェアファックス夫人は忙しそうに夕食の準備をしていました。
すると、先程会った失礼な男の犬がジェインの目の前に座っています!
こうしてジェインは、ソンフィールド邸の当主と最悪な出会いをしてしまったのです…
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
この【ジェイン・エア】が100年経った現代でも人々から愛される要素とは…
金持ちが故に悪女に騙され大きな代償を負わされたロチェスターと
本当の自分を受け入れられずに疎まれて育った孤児のジェイン
そんな2人が欲していたのは…
お金でも権威でもなく…ただただ、本当の自分を愛いして欲しかった~
様々な障害や当時の偏狭的な倫理観が2人の愛を邪魔しますが、ジェインは盲目となったロチェスターと晴れて結ばれます。
そうです!か~な~ら~ず 最後に愛は勝つ~♪ですね。
鉄板な純愛ストーリーは、いつの時代も支持されるんですね。
ところがヴィクトリア朝時代では、女性が純愛を貫き晴れてハッピーエンドを迎え大反響を呼びました。
そして、ドラマのラストシーンは、ジワりとくるシーンで締めくくられます。
幼少のジェインがリード夫人の元で辛い思いをしていた頃、家族の肖像画に“お前は家族じゃない”と入れてもらえませんでした。
そのジェインがやっと本当の家族を持ち…
ロチェスター、ジェイン、アデル、フェアファックス夫人とグレースが抱っこしている2人の子供(ロチェスターとジェーンの子ども)、使用人のジョージ、犬のパイロット
セントジョンリバーズの姉妹夫婦(ジェインの従妹)
の家族全員が庭に集まり、家族の肖像画を描いてもらいます。
そしてドラマは、とても幸せそうな家族の絵で幕を閉じています。
や~、最後にこう来たか!
やはりBBCドラマは良作でした。