今回紹介するドラマは ファーゴ/シーズン5
シーズン5解説
2023年にアメリカFXチャンネルにて放送
2019年のミネソタ州とノースダコタ州を舞台に描かれたアンソロジー・ダークコメディのTVドラマです。
このドラマは、1996年の映画でコーエン兄弟監督の作品【ファーゴ】から着想を得たプロデューサーのノア・ホーリーが原案、脚本、製作総指揮を務めるドラマシリーズのシーズン5。本作でもノア・ホーリーは全話の脚本を務め、コーエン兄弟も引き続き製作総指揮として参加しています。
全10話(1話43分~56分)
このドラマは、全シリーズを通し55回のエミー賞にノミネートされ、そのうち6回を受賞した人気も評価も非常に高い作品です。
そして、シーズン5もゴールデングローブ賞の”ミニシリーズまたはテレビ映画賞”にノミネートされ、同じく同賞の主演男優賞と女優賞にハムとテンプル両名がノミネートされました。
また、アメリカの映画とテレビ集約サイトのレビューでは、96%の支持率を獲得し【ファーゴ】の根強い人気が伺える結果となっています。
今回のシーズン5は、設定がガラリと変わりギャングものではありませんでしたが、ストーリーは相変わらず面白いです。
今回のテーマはDV!
時代設定も2019年と過去の作品ではない身近なドラマになっています。
身近と書きましたが、あくまでアメリカ人にとってということで、日本人の感覚とはほど遠い作品です
そしてもう1つ、パワーで人を支配する保安官VSマネーで人を動かす債権回収会社CEO の対決も面白い!
実にアメリカンだ~
キャスト紹介
ドットの夫ウェイン役のデイヴィッド・リズダールは、何とミネソタ州出身の俳優です。
本作では、寛容な善人だけど天然でお人好しなウェインを好演していました。
彼は、【ファーゴ】に引き続きノア・ホーリーが手掛けるドラマ【エイリアン】の出演も決定しています。
ノア・ホーリーの【エイリアン】なんて!絶対に観たい!
ミネソタ
ドロシー(ドット)・ライオン(ナディーン)/ジュノー・テンプル | ミネソタ州スカンディア出身の一見平凡な主婦 |
ウェイン・ライオン/デイヴィッド・リズダール | ドットの夫で韓国車KIAの代理店店主 |
ロレイン・ライオン/ジェニファー・ジェイソン・リー | 大手の債権回収会社を経営する、ウェインの母 |
スコッティ・ライオン/シエナ・キング | ドットとウェインの9歳の娘 |
インディラ・オルムステッド/リチャ・ムールジャニ | ミネソタ州スカンディアの保安官代理 |
デニッシュ・グレイブス/デイヴ・フォーリー | ロレインの弁護士 |
ウィンク・ライオン/ヤン・ボス | ロレインの夫でありウェインの父親 |
ノースカロライナ
ロイ・ティルマン/ジョン・ハム | ノースダコタ州スターク郡の保安官で農場主 |
ゲイター・ティルマン/ジョー・キーリー | ロイの息子で保安官代理 |
オル・マンチ(ウーラ・ムーンク)/サム・スプルウェル | 謎の雇われ犯罪者 ウェールズ出身 |
ウィット・ファー/ラモーネ・モリス | ノースダコタ州警察官 |
カレン・ティルマン/レベッカ・リディアード | ロイの現在(3番目)の妻 |
あらすじ 第1話 庶民の悲劇(56分)
“ミネソタ・ナイス”
1)非常に温厚な態度 やせ我慢も多く どんなに悪い状況でも平気なフリをする…
ミネソタ州スカンディア中等学校
“秋祭り実行委員会”が開かれていた学校で、PTA役員たちが乱闘騒ぎを起こし、
会場はカオス状態に陥っていました。
委員会に参加していたドロシー・ライオンは、娘スコッティの肩を抱き乱闘騒ぎの行方を大人しく伺っていました。
「放せこの野郎!」
しかし、2人の周りでも男女の入り乱れての大ケンカは一向に収まる気配はありません。
「出るわよ 邪魔されたら噛みついて」
意を決したドット(ドロシー)は、スコッティの手を握り出口に向かいますが…
「話を聞け」
そこへ、1人の男性がドットの肩を掴んできたのです。
ところがその瞬間、振り返ったドットは男性にスタンガンを押し当て倒してしまいます。
そこへ、ドットを止めようと警官がやって来ますが
またもやドットは、警官めがけスタンガンを当ててしまいました。
すると、それを見た警官たちがドット目がけ取り押さえに来ます。
「やめて 今のはミスよ」
多勢に無勢、ドットの叫びも虚しく彼女はスコッティの目の前で手錠をかけられてしまいました。
「娘はどこ?」
「ママ」
スコッティには女性警官が付き添っています。
「大丈夫よ 警察はママを助けてるの」
「ママ」
「放して」
とうとう、ドットはパトカーに乗せられてしまいました…
“これは実はである
実際の事件は2019年ミネソタ州で起こった
生存者の希望で人名は変えてあるが 死者への敬意を込めその他は忠実に描いた”
(ファーゴは、映画もドラマもこのテロップから始まります。冒頭からブラックジョークが効いていますが、この作品は完全なフィクションです)
「最悪」
乱闘騒ぎの巻き添えで、普通の主婦ドロシー・ライオンは逮捕されてしまったのです。
しかし、この逮捕がキッカケとなり、ドットは彼女の過去から追われる事に…
続きは本編で!
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(配信は投稿時のものとなります)
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
【ファーゴ】と言えば、ミネソタ・ナイスな住民と心優しい地元の保安官や警察が、凶悪事件やギャング間抗争を解決するブラックユーモアとエグイ事件の対比が面白い作品ですが、
今回のシーズン5では、DVをテーマに
- 借りを返す“目には目を歯には歯を”か…
- 或いはその借りを“許す”のか…
といった宗教的寛容を対比して描かれた作品でもありました。
人間ではなくなった罪喰らいマンチの解説
ゲームやアニメ好きな方なら“罪喰い”は馴染み深いかもしれませんが、
シーズン5に登場したオル・マンチ(ウーラ・ムーンク)こと“罪喰らい”は、ウェールズ出身なのでキルトのスカートをはき数百年生きている不思議な存在として登場しています。
マンチに関しては、何で~と不思議なシーンが数々ありましたが、彼がこの世の者ではないと分かると謎は解けました。
では、罪喰らいとは…
亡くなった人の罪を霊的に引き受けるために儀式的な食事を食べる人。この食べ物は、亡くなったばかりの人の罪を吸収し、その人の魂を赦すと信じられていました。その結果、罪を食べる者たちは、自分たちが罪を食べたすべての人々の罪を背負った。彼らは通常恐れられ、避けられました。最も一般的には、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、ウェールズに隣接するイングランドの郡、およびウェールズ文化と関連付けられています。参考:罪喰らい
彼は、提供された食事によって、罪を食べ悪事を働いて生きながらえてきました。
ですから、最終話でマンチがドットたちの愛情を込めて作ったビスケットを食べて笑顔になるシーンには、実に深い意味があるんです。この罪喰らいの意味を知ってから是非とも見て欲しいラストシーンなんです。
ランボーなドットがなぜひ弱なウェインを愛するのか!
ドットは、最終話で借りを返しにやって来たマンチに
借りを赦すことの大切さを諭すのですが…
彼女自身もDV夫から逃亡した日陰の存在。名前も過去も捨てひっそり暮らして来た身です。
しかし実際は、ティルマンの3番目の妻カレンのように、実際に追い詰められている人間は寛容になれるような余裕なんてないんだと想像できます。
そんなドットもまた、ウェインのような純粋無垢な男性に出会い、心の傷を癒されたのではないでしょうか…
ドットだからこそウェインの良さが分かる!
ノア・ホーリーは、シーズン5がファーゴのラストシーズン(なるのかな?)だと語っていましたが、
仮にそうだとしても、【ファーゴ】全シーズンのラストを飾るのにふさわしく
罪喰らいマンチの幸せそうな顔で終わるのですから…納得のラストでした!
ニクイな ここで罪喰らいか~ このドラマ…罪深い人ばかりだったからな~