今回紹介するドラマは ファーゴ シーズン4
ドラマ版【ファーゴ:カンザスシティ】シーズン4 解説
2021年アメリカ合衆国製作 スターチャンネルEXにて配信 全11話
1996年の映画【ファーゴ】に着想を得てプロデューサーのノア・ホーリーが原案、脚本、製作総指揮を手掛けたドラマのシーズン4です。
S1~S3同様にコーエン兄弟も製作総指揮として参加しているアンソロジー作品。
今までの作品では、ミネソタ州を中心に描かれていましたが、
最新作では唯一看護師のメイフラワー(ジェシー・バックリー)がミネソタ訛りで話す程度、物語の舞台は1950年、アメリカ中西部のミズーリ州カンザスシティとなっています。
長年に渡るマフィア間の抗争、そこへ食い込む黒人裏社会と、当時の人種差別や移民問題を絡めたクライム・サスペンスです。
アメリカ社会の根底にある“力こそ正義”この縮図がとても理解できる作品となっています。
シリーズはアンソロジーとなっていますので、どの作品から観ても楽しめますが【ファーゴ】をたっぷりと楽しみたい方は、是非映画版ファーゴから観る事をおすすめします。
S4では、S2に登場するマイク・ミリガンの過酷な少年時代が描かれています。
あらすじ
『これは実話の映画化である。実際の事件は1950年ミズーリ州で起こった。生存者の希望で人名は変えてあるが、死者への敬意をこめて事件のその他の部分は忠実な映画化をおこなっている』
(ファーゴは、映画もドラマもこのテロップから始まります。冒頭からブラックジョークが効いていますが、この作品は完全なフィクションです)
カンザスシティの裏社会
1900年 ミズーリ州カンザスシティ
街は、ユダヤ系犯罪組織によって裏社会が牛耳られていました。
その後、マフィア間の抗争が続き、アイルランド系組織が裏社会の権力を握ります。
1920年
ギャング間の激しい闘争が続く中で
ユダヤ系モスコウィッツ・シンジケートとアイルランド系ギャングのミリガン・コンサーンは、争いを避けるため協定関係を結びお互いの息子を交換する事にしました。
しかし、この協定も8年後にはミリガン・コンサーンの策略によって虚しく破られてしまいます。
“平和は長続きしない”のでした。
1934年には、イタリア系マフィアのファッダ家が台頭してきます。
そして慣習に従いミリガン、ファッダ両家の息子の交換がされました。
しかし、またもファッダ家の裏切りにより協定は破られ…こうしてアイリッシュマフィアも壊滅していきました。
1949年 次はロイ・キャノン率いる黒人犯罪組織キャノン有限会社が台頭して来ました。
イタリア・マフィアのファッダ家とキャノンは伝統に習い互いの息子ゼロとサッチェルを交換します。
この頃の協定の場には、純粋な白人は1人も居ませんでした。
イタリア人、黒人、アイルランド人が平等な権利の為に戦っていたのです。
この平等な権利とは…いったい誰が決めるのでしょうか?
そして、誰もが…この誰がになる為に…裏社会でサバイバルゲームが繰り広げられます
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(配信は投稿時のものとなります)
キャスト紹介
ロイ・キャノン役のクリス・ロックは、コメディアンとして有名ですが【ファーゴ:カンザスシティ】では、コメディ要素ゼロでロイを熱演しています。
プロデューサーのノア・ホーリは、ロイ役にクリス・ロックが真っ先に浮かんだとインタビューで答えています。
そして、ホーリから直接オファーを受けたロックは、自身の祖父母を参考にしてロイの役作りをしたそうです。
そして、見事に演じ切っていました。
ロイ・キャノン/クリス・ロック
黒人犯罪組織キャノン有限会社のリーダー。ファッダ家と覇権を巡り対立しています。
ジョスト・ファッダ/ジェイソン・シュワルツマン
イタリア系マフィア、ファッダ家の長男。
子供の頃、ラビ・ミリガンと交換されアイルランド系マフィアのミリガン・コンサーンの元へ預けられます。
ガエターノ・ファッダ/サルヴァトーレ・エスポジト
イタリア系マフィア、ジョストの弟。
父親の死を切っ掛けに本国イタリアからアメリカへやってきました。気性が荒くトラブルメーカー。兄のジョストと組織の主導権を争います。
オラエッタ・メイフラワー/ジェシー・バックリー
葬儀屋の向かいに住む謎の多い看護師。登場人物の中で唯一ミネソタ訛で話します。
ラビ・ミリガン/ベン・ウィショー
ユダヤ系マフィアの家にトレードされたのち、ファッダ家にトレードされたアイルランド系マフィアの息子。2度目のトレードで父親を見限り裏切っています。
その後ファッダ家に入り、ロイの息子サッチェルの世話役になり彼を守ります。
オーディス・ウェフ/ジャック・ヒューストン
ファッダ家から賄賂を受け取り、ファッダ家の為に働く刑事。戦争体験が原因で精神的に闇を抱えチック症を抱えていました。
デフィー・ウィックウェア/ティモシー・オリファント
脱獄囚のゼルメアとスワニーを追い、カンザスシティへ来たモルモン教徒の連邦保安官。ウェフと共に捜査をする中でウェフとファッダ家の繋がりに気づきます。
エセルリダ・スマトニー/イマイリ・クラッチフィールド
葬儀屋を営む白人の父と黒人の母を持つ少女。優秀ですが黒人であるため、目を付けられ虐めや体罰を受けます。
好奇心が強く、向かいのアパートに住むメイフラワーに疑念を抱くようになります。
勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます。
マイク・ミリガン
S2でもファミリービジネスの終焉が描かれていましたが、その終焉を招いた張本人マイク・ミリガンの子供時代が描かれていました。
キャノンと名乗らずミリガンの名を選んだサッチェルの心境…察するに余りあり過ぎです。
S2では陽キャラだった彼の過去がこんなに過酷だったとは…
キャノン有限会社はロイが亡くなった後、ニューヨク・マフィアに吸収されサッチェルはジョー・ブーロの部下となってマイク・ミリガンとして生き延びたのだろうと…S2への繋がりを感じられ余韻が残ります。
ファーゴではシーズンを通しオマージュが演出され、それを見つけるのがファンの楽しみでもあります。
S4ではマイク・ミリガンっていいヤツだ!と感動させられました。
S4でもいきなり超常現象!
- S1:空から大量の魚が降って来ました(実際のニュースで原因は竜巻とされています)
- S2:UFOが出現しています(1979年ミネソタ州でUFOの目撃情報が多数ありました)
- S3:正体不明の謎の男性ポール(天使?幽霊?)
- S4:男の幽霊が突如現れました。そして、ラビとカラミータを巻き込んだ巨大竜巻(1953年に巨大竜巻がミズーリ州を襲っています)
幽霊は別として、その年に起こった事例をストーリーに絡めることで冒頭のテロップ”実話である”を演出している細かな拘りが感じられます。
このシーン…【アンタッチャブル】のオマージュか⁉
脱獄囚のゼルメアとスワニーを逮捕する為に、連邦保安官のデフィーは警官隊を引連れ駅に配備します。
この時、ゼルメアとスワニーと警官隊との銃撃戦が繰り広げられる駅!
何処かで観たような…
そうなんです!あの映画【アンタッチャブル】のシカゴ駅での乳母車シーンと同じ?
もしかして…このシーンもオマージュ?
【アンタッチャブル】の時代は1930年頃の禁酒法の時代。財務官のエリオット・ネス(ケビン・コスナー)とマフィアのアル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)との攻防を描いた作品でした。
しかし、S4の駅での銃撃シーンは、スッキリしない終わり方でチョット残念…
なんでデフィーが~と皆が思いますよ。絶対に!
この時代のアメリカは、戦後の高度経済成長期で移民も多く“人種のルツボ”と言われた時代で、黒人の公民権運動が盛んに行われていました。
激動する時代の中で、差別を受け権利を持たない人々が生きていく為に必要としたのが…裏社会の中で力を持つ事だったんですね。
金と力を掌握した者が権力者となる…今現在に至っても、この価値観はアメリカ社会に受け継がれている価値観ではないでしょうか…
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