今回紹介する映画は 残酷と異常
2014年カナダ製作 監督、脚本:メルリン・デルビセビッチ
原題:Cruel and Unusual
原題を直訳したタイトルですが、ちょっとイメージが分かり難く損をしています。
この作品、サイコスリラーだと思った方は肩透かしとなりますのでご注意ください。
しかし、本作の良さは最後まで観たら分かります。
ラストシーンでの主人公のスキッリした表情と、冒頭~終盤までのずっと陰鬱な表情の違いが、この作品に込められているメッセージではないでしょうか。
そして、観ている私も納得したんだね~と、主人公同様にスッキリした気持ちになれました(私だけかな?)
罪を認めない人間をコンセプトにし、その罪を受け入れるまで犯した罪を繰り返し体験させられる……
そんな異常で残酷なストーリーです。
キャスト紹介
エドガー:デイビッド・リッチモンド=ペック
メイロン:Bernadette Saquibal
ドリス:ミシェル・ハリソン
ジュリアン:マイケル・エクランド
ウィリアム:リチャード・ハーモン
ファシリテーター:メアリー・ブラック
カウンセラー:アンディー・トンプソン
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(配信は投稿時のものとなります)
あらすじ 妻の殺害を繰り返す地獄のループドア・7734(hell・地獄)
何故エドガーは地獄へ堕ちたのか…
エドガーは、必死で妻メイロンに心臓マッサージをし蘇生を試みますが、メイロンの意識は戻りません。 そして、エドガー自身も気分が悪くなりそのまま意識が遠のきます……
やがて、エドガーが意識を取り戻すと、何故か車のハンドルを握っていました。
そして、助手席には死んだはずのメイロンがいます。
驚きの余り、エドガーは急ブレーキをかけ車外へ飛び出しました。
すると「あの木…」
突然、エドガーは道路沿いの家の庭に生えている1本の木が気になり、そちらへ向かって歩き出します。
メイロンは、そんなエドガーの勝手な行動に苛立っていました。
仕方なくメイロンが彼の後を追うと
「ひどい夢を見た」エドガーは動揺していました。
メイロンは、心配になって車の運転を代ろうと気遣いますが、エドガーはメイロンに運転をさせたくありません。
「私だって運転できる」
メイロンは、移民の妻をいつまでも信頼しないエドガーの態度に憤りを感じていました。
その時、エドガーのスマホが鳴ります。
その電話は、メイロンの連れ子ゴーガンの通う学校からかかってきました。
どうやら、ゴーガンは友達とケンカをして怪我をさせてしまったようです。
電話を切ると、エドガーはゴーガンに電話をかけますが、さっぱり繋がりません。
エドガーは、横で息子を心配するメイロンに、直ぐ帰ってくるよと他人事のようです。
しかし、我が子を心配するメイロンは、気が気ではありません。
ところが、エドガーはそんなメイロンの気持ちを分かろうともせずに、ゴーガンを非難した挙句、もっと厳しく躾するようにとメイロンを責めたのです。
その夜、エドガーはメイロンの作ったメーヌード(フィリピン料理:トマト風味の煮込みスープ)を1人で食べていました。
一方メイロンは、まだ帰らないゴーガンが心配でなりません。
そこへ、エドガーの兄ランスが突然訪れます。
エドガーは、いきなりの訪問を驚きました。
何故ならランスは、エドガーと移民で年の離れたメイロンとの結婚を反対していたからです。
ところが、エドガーはメイロンが浮気しないかと、不安な気持ちをランスに相談していました。
メイロンはフィリピン出身の移民です。
ランスは、そんな彼女との結婚に対し、貧しい国の女性をお金で買ったんだから仕方ないと言うのでした。
その時、突然エドガーの気分が悪くなりました。
エドガーは、持病の潰瘍が痛み出したとメイロンに言うと、部屋へ向かいますが、何故かドアが中々開きません。
そして、強引に押し開けると…
地獄のトビラ
そこは全く身に覚えのない空間でした。
何処かの古い施設のようです。
そして、エドガーが出てきたドアには7375と番号がありました。
何が起こっているのか…エドガーには訳が分かりません
そこで家へ戻ろうと、エドガーは7375のドアを開けようとしますがビクともしません。
ふと気づくと…
エドガーの右腕に「uxor」と刻まれています(ラテン語で妻の意味です)
怖くなったエドガーは、大声で人を呼びますが返事はありませんでした。
困ったエドガーは、廊下にある部屋のドアを片っ端から開けようとしましたが、どのドアも開きませんでした。
一体、どうしたらよいのか、エドガーは途方に暮れてしまいます。
その時、突然1つのドアが開きます…
エドガーは恐る恐る中へ入りました。
その部屋には、10人ほどの人が椅子に座って居ました。
他にも、モニターに映る女性やその横で発言する黒人女性、残りの人々は黒人女性の告白を聞いています。
その時、進行役をしているモニターの女性が「あなたを待っていたのよ」とエドガーに話しかけます。
彼女はエドガーが何をしたのか…そして、その感想をエドガーに聞いてきました。
エドガーが告白者になっていましたが、何のことやらエドガーにはサッパリ理解できません。
そして、エドガーは逆に色々質問をしてみました。
しかし、進行役は質問には答えず「座りなさい」とただ繰り返すだけでした…
次の告白者は、エドーガーの隣にいたウィリアムです。
彼は両親を惨殺したと告白しました。
その次に、またしてもエドガーが呼ばれます。
そこで、エドガーは何故自分がここに居るのかさえ分からないと告白します。
すると進行役の女性は、NO.7734のドアへ行くようにエドガーに命令しました。
言われるままにエドガーはNO.7734の部屋を探し、ついに地下にあるNO.7734の部屋を見つけました。
その部屋の中には、またモニターがあり今度は男性が映っていました。
そのカウンセラーの役目の男性は、エドガーが妻を殺害したのだ告げます。
そして、エドガーの腕の刻印はその残虐さを伝えるものだと…
続けてカウンセラーは、エドガーの記憶が次第に強くなってくるだろうと言いました。
しかし、エドガーは妻を殺した事を否定します…
彼には全く信じられない事でした。
するとカウンセラーは、エドガー自身も既に死亡しているのだ告げます。
いったい、エドガーに起こった真実とは…
そして、次に待ち受けている地獄とは…
続きは本編で!
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勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます。
ブログ冒頭にも書きましたが、この作品の良さは最後まで観なければ伝わりにくいです。
なにしろ、途中までは太った中年男性の陰鬱な顔を見続けなければいけないので…
そうです!この作品は、死後の世界を描いたストーリーで、宗教的死生観を感じる作品になっています。
罪を犯した人間は地獄へ堕ち業火で焼かれ苦しみ続ける…
が宗教的地獄のイメージですが、この作品の地獄は一味違っていました。
エドガーの贖罪
エドガーは、何度もループを繰り返し妻の殺害当日や、殺害に至る経緯の記憶を次第に取り戻していきます。
何度も何度も繰り返しメイロンを殺害する苦しみを味わって、やっとメイロンの死は事故ではなく自分が殺害したんだと認めることが出来ました。
そして、殺風景な部屋や番号のついたドアこそが地獄だったのです。
また、エドガーは自身の殺人体験だけでなく、事件当日の被害者メイロンやゴーガンに憑依体験もします。
こうして、エドガーが如何に彼らを苦しめていたのか…
やっと、自分の愚かさに気づくことが出来ました。
エドガーの本当の姿は、家族に対して自分勝手で全く思いやりを持っておらず、メイロンを追い詰めたのは自分自身だとと思い知らされます。
そんな中、ウィリアムはエドガーが罪を認めれば、罰を受ける事で安心感を持てるようになると教えます。
こうして、自分の罪を受け入れてからのエドガーは、恐怖心から解放されます。
その後、エドガーは諦めずに事件当日の起こった出来事を変えようと行動を起こしました。
まず、自殺して地獄に堕ちたドリスとドアの向こうへ行ってしまいます。
そして、いよいよ過去を変えられる直前になった時
エドガーは自分がメイロンを殺さなければ、メイロンがエドガーの殺人犯として地獄に行ってしまう事に気づきます。
すると、エドガーはドリスの代わりに自殺をし、再び死後のグループに戻ったのでした。
その後、グループの仲間達はエドガーの真似をして地獄から脱出し殺人当日を変えようとは誰もしません。
何故なら、エドガーはその代償を払って、以前より重い罪を背負ったからです。
なのに…ラストのエドガーは、何故か納得気なスキッリした表情で皆の前で告白を始めます…
1年後メイロンとゴーガンは、冒頭にエドガーが見つけた木(伏線でした)を訪れます。
そして、年を取ったドリス(1972年のドリスから現在のドリスになっています)と3人で庭の木へ花を手向けます。3人はエドガーに感謝の気持ちを持って語らいました。
正に!この作品はエドガーの贖罪を描いた作品でした。
妻を殺害し、自身も妻に毒殺された死と
妻やドリスを救って自ら地獄を選択した死では余りに違いすぎます
ラストのエドガーのドヤ顔が後悔のない生き方とは…と教えてくれているように思えます。
でも、生きてるうちに、家族を大切にしておくべきでしたね。
この作品伏線も至る所にあり2度観して、より楽しめる良作だと思います。
あなたも罪を悔い改めよ~(ジョークですよ)