今回紹介するドラマは Blackout
2020年 ベルギー製作 監督:ジョエル・ギスラン・ヴァンホーブルック
原題:blackout
全10話(1話 41~43分)
私が今まで観てきた、ベルギー製作のサスペンススリラーはどれも秀逸でした!
それはきっと、社会問題に鋭く切り込み、忖度など微塵もなく、エグイほど本質をついたストーリーが面白いからでしょう。
本作でも、国家のエネルギー覇権を争う政治家やエコ・テロリズムに踊らされ利用される人々、トルコ・クルド人問題に再生エネルギー投資と盛り沢山!
また、エネルギー問題は現在進行形で、正に日本でも起こっている決して他人事ではない問題でした。
それでは、この盛沢山のテーマの中から知っておくと作品がより面白くなるところを調べてみましたので、簡単に纏めていきます。
トルコVSクルド人問題
クルド人問題の発端は、遡ること第一次世界大戦
この戦争に敗戦した『オスマン帝国』は崩壊。
毎度のことながら戦勝国がオスマン帝国領土を分断した事から民族問題が勃発するパターンです。
しかし、世界大戦以前からクルド人たちは、イラン、イラク、トルコ、シリアの国境を跨ぐ一帯のクルディスタン居住区に暮らし「目障りな少数民族」と差別され決して平和に暮らしていたわけではありませんでした。
そして終戦後、1916年のサイクス・ピコ協定によってクルド人は居住区を失い、その一部は過激派となりイランやトルコとの戦闘が繰り返されるようになります。
こうしてトルコは、少数民族クルド人を抑圧し続け、過激派PKKとの戦闘が今なお続いているのです。
こうした不幸にも国家を持たない民族は、18世紀以降ユダヤ人や内モンゴル、そしてクルド人となりました。
参考:ダイヤモンドオンライン
エネルギー問題の解説
大きなテーマの1つにエネルギー問題が描かれていました。
国のエネルギー政策は、大きな利権が絡み政治家や利益団体にとって覇権を握るための大切な政策の1つ
そして、次世代エネルギーに投資家たちは大金をつぎ込むわけですね。
環境にやさしいなどと建前でしかありません。
(日本でも太陽光の投資案件で逮捕者が出ていますよね。実は非常に闇が深い!)
そして、各国のエネルギー政策が現在進行形で世界規模で揺らいでいます。
(これもヨーロッパ発のエコエゴイストたちが騒ぎ始めた事です。結局は金!金!金!)
この作品の製作時は、ロシアのウクライナ侵攻前なので、原発推進VS再生可能エネルギーが政争の具として描かれていました。
しかし、この政争のために一番迷惑を受けるのは国民です!
何がレジ袋有料だ!
何が再生エネルギー賦課金だ!
何で古いガソリン車の自動車税が高くて、高級車の電気自動車は税金が安くて補助金まで出るんだ~
と叫びたくなるわけですね~(落ち着こう!深呼吸して~)
キャスト紹介
メインキャスト
アネミー・ヒルブランド首相/サラ・デ・ロー
ベルギー首相 再生エネルギー推進派
ヘルマン・パウエルズ/ルーカス・ヴァン・デン・アインデ
アネミーの夫で元政治家 エルカを庇い車椅子生活を余儀なくされました。
ミヒャエル(マイケル)・デドンカー/ゲールト・ファン・ランペルバーグ
連邦警察の捜査官でDA3(テロ対策班)のチーフ
エルカ・パウエルズ/アンナ・デ・セラ
ヒルブランド首相の娘
トム・デュトロイ/マチュー・シス
ヘルマンの介護者
警察関係者
ゲリット・リーマンズ/トム・ヴァン・バウウェル
連邦警察本部部長
ナタリー・メイス/ルース・ベカート
連邦警察の主任捜査官でミヒャエルの元恋人
ギイ/マイケル・バウウェンズ
定年間近の連邦警察の捜査官 DA3メンバー
リラ/ノラ・ガリブ
連邦警察の捜査官 DA3メンバーのミヒャエルの部下
リーン/ローレンス・ルートフーフト
連邦警察の捜査官DA3メンバーのミヒャエルの部下
ペドロ/カルロス・シュラム
連邦警察の捜査官 DA3メンバーのミヒャエルの部下
ディミ/ウォード・ケレマンズ
連邦警察の捜査官 DA3メンバーのミヒャエルの部下
政府関係者、国会議員
ジョナス・バーリーエン/ジェル・ド・ブール
総理府顧問
エルヴィン・ジェイコブス/マイケル・パス
野党議員 原子力発電推進派
クリストフ・ヴァンダースティーン/トム・ターネスト
内務大臣 ジェイコブスと同じ政党
ラフ・ドゥレウ/ロビー・クレイレン
アネミーの所属する与党の党首
ランダー・ヴァンスティーンランド/マティアス・セルク
社会党党首 再生エネルギー推進派
ケルツーム/イクラム・アウラッド
エネルギー副大臣
テロリスト
ラナ・ムーンズ/ヴァイオレット・ブラックマン
右派グリーンライトの活動家で反原発、多文化反対派
ジギー・ベルクモース
右派グリーンライトの活動家で反原発、多文化反対派
フランク・デヴァイスト/マシュー・シーパーズ
コブラ名のテロリストで元精鋭部隊所属の軍人
フランクが、なぜクルド人たちを命懸けで助けるのか…
理由が知りたい方はこちら↓の記事を是非読んでみて下さい!
ヨハン・リーバーズ/ルイス・タルプ
バイパー名のテロリストで元軍人
リコ・ファン・フリースウェイク/ルディ・シュリンダー
オランダ人テロリストでベルギーの原発テロの首謀者
あらすじ 第1話(43分)
ブリュッセル 国会議事堂
「……政治家は国民の代表であり未来を創る立場です。こんな粗探しより大切なのは政策です。今は大切なことに集中しましょう。大切なことそれは…我が国の社会と未来のために一体となってすすむことです。ありがとう」
アネミー・ヒルブランド首相が議会でのスピーチを終え席に戻った時でした。
アネミーのスマホに突然非通知のメールが届きます。
そのメールには、彼女が息を呑むほどのショッキングな動画が映っていました。
“明かりを戻すな 娘が死ぬ”
そこに映っていたのは、メッセージを持たされ身体を拘束された1人娘のエルカだったのです。
そして、エルカは恐怖でとても怯えていました。
アネミーは、その状況が全く理解できず、その後の野党の反対質疑も全く耳に入りませんでした…
その夜
首相公邸に1台の車が入って来ます。
「ボス」
1人のSP(シークレットサービス)が、車から降りてきた男に声をかけました。
「もう君のボスじゃない」
「そうですね」
2人は、親しそうに握手します。
するともう1人のSPも彼に気づいて近づいて来ました。
「DA3(テロ対策班)の仕事はどうです?」
「順調だ」
公邸に呼ばれたミヒャエル・デンドンカーは、元首相付きの警護主任でした。
彼は、元部下のSPと懐かしそうに握手を交わします。
「なぜ ここに?」
「職務上の秘密だ」
「そうでしたね」
「じゃあな」
ミヒャエルは、そう言って公邸に足早に入って行きました。
公邸のリビングでは、車椅子に乗ったアネミーの夫ヘルマンがノートPCを用意して待っていました。
「ミヒャエルが来たわ」
アネミーがミヒャエルを連れてリビングへ入ってきました。
「どうした?」
既に警護官でもないミヒャエルは、突然公邸に呼ばれたことに不安を感じていました。
「エルカが誘拐された」
そう言うと2人は、ミヒャエルにエルカの動画を見せます。
「明かりを戻すな?何のことかわからん 犯人の見当は?」
「非通知発信だったし たどれる?」
「やってみるが、たぶん使い捨ての携帯電話だ」
アネミーは、今まで1度も脅迫など受けた事もなく、したがって犯人に繋がるものは全くの皆無でした。
「誰かに話した?」
ミヒャエルが確認します。
「誰にも」
「つまり?」
しかし、なぜ自分が呼ばれたのか…ミヒャエルには見当もつきません。
結局、アネミーは娘の安全を考慮して警察に伝えておらず、ミヒャエルを頼って呼び出したのでした。
そして、秘密裡に捜査して欲しいと頼むのです。
「だから君を呼んだ アネミーが信頼している」
ヘルマンもたたみかける様に言います。
するとその時、部屋中の電気が一斉に消え、突然暗闇に包まれてしまいます。
しかし、この停電は西ヨーロッパ諸国の広域が一斉にブラックアウトになった
大規模なものだったのです。
瞬く間に、ブリュッセルは街中の明かりが消え、インフラも何もかもが止まってしまいました…
しかし、このブラックアウトによって
アネミーは、母親として娘の命を守るのか
ベルギー首相として1,100万人の国民生活を守るのか
苦渋の選択を迫られることになるのです…
続きは本編で!
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勝手に私見考察
ここからはネタバレを含みます
この作品は、パズルのピースを合わせていくように徐々にテロリストの全容が明らかになっていくハラハラ・ドキドキ感を味わえます。
また、その原発テロはただのエコテロリストだけではなく、その背後には無知な活動家を利用した過激派テロリストや首相への復讐を目論む男が関わっていてかなり複雑なスリラーでした。
しかし、この作品はただのサスペンス・スリラーではなく、かなりメッセージ性の高い作品だったのではないでしょうか。
それは、政治家のイデオロギーや利権で国家の大切なエネルギーが政争の具にされ政策は右往左往、それに合わせて国民生活も巻きこまれ、善良だった1人の男を犯罪者へと変えてしまいました。
(この日本でも昨今、CO2廃止!化石燃料廃止!太陽光発電だ!コオロギ食べろ!などなど典型的です)
しかし、物語のラストでは、原発推進派のヤコブス議員が新首相としてエネルギー政策を発表して終わります。
そして、その政策こそ本当に国民が願うエネルギー政策ではないでしょうか。
では、その中から抜粋して締めたいと思います(今回は堅すぎました~)
「合理的に考えれば転換を考えるべきだが(原発廃止)私は安定を選びたい。
原子力発電は、電力の安定供給を保障する。むろん異論はあるだろう、しかしあと数年使用を続けるのは問題ないはず。その間に議論を深めこの国のために最良の道を模索していきたい。」
かなりリベラル感を感じるドラマでしたが、さすがは切り口の鋭いベルギースリラーと唸りました!