今回紹介するドラマは エマ(2009年BBC製作)
2009年イギリスBBC製作 ジェーン・オースティン同名小説のドラマ化です。
エマ~恋するキューピット~解説
原作の冒頭書き出し部分です。
「エマ・ウッドハウスは、ハンサムで賢く、豊かで、快適な家と幸せな性質を持つ、存在の最高の祝福のいくつかを結びつけるようでした。そして、彼女を苦しめたり、悩んだりすることはほとんどなく、世界で21年近く生きていました。エマは結婚する必要はなく、自分の世帯の頭であり、たくさんのお金を持っていますが、ナイトリー氏の懐疑主義にもかかわらず、彼女は周囲の人々とのマッチメイキングを楽しんでいます。
原作では、エマの“縁結び”が中心となっていますが、BBC製作ドラマでは、エマ、フランク・チャーチル、ジェーン・フェアファクスの3人の生い立ちを比較し物語の軸として描かれています。
ドラマ冒頭、幼い時に母親を亡くした3人の子供達が紹介されています。
キャスト紹介
エマ・ウッドハウス:ロモーラ・ガライ
ジョージ・ナイトリー:ジョニー・リー・ミラー
ヘンリー・ウッドハウス:マイケル・ガンボン
ハリエット・スミス:マイケル・ガンボン
エルトン:ブレイク・リットソン
ウィストン夫人(アン・テイラー):ジョディ・メイ
ミス・ベイツ:タムシン・グレイグ
ジェーン・フェアファックス:ローラ・パイパー
フランク・チャーチル:ルパート・エヴァンス
あらすじ
エマ・ウッドハウスは裕福で、美しく、機知に富む女性です。幼い頃に母が亡くなり、父は、家庭教師のアン・テイラーを雇い姉妹を大切に育てます。
ウッドハウス家とナイトリー家は村でも1,2の大地主階級です。エマが赤ん坊の頃からナイトリー家とは懇意な間柄です。
エマは、姉イザベルとナイトリー氏の弟ジョンは惹かれあっていると言いますが、ナイトリー氏はありえないと信じられない様子です。「万が一結ばれても2人が望んだ結果だ」と得意げなエマを牽制します。
やがて、イザベルとジョンは結婚します。
父のヘンリーは、結婚してロンドンへ行ってしまうイザベルに悲観します。エマはそんな父を、私が居るから何も変わらないと優しく慰めます。
ナイトリー氏は、「偶然だ」と2人のキューピッドとなりご満悦なエマに言います。しかし、エマは「私の直感と才能のおかげよ」と益々得意気に言います。
エマは、次の縁結びのターゲットを探します。
彼女の目に留まったのは、男やもめのウィストン氏とエマの家庭教師ミス・テイラーです。
そして、エマの思惑通り2人は結婚します。
しかし、エマは自分が蒔いた種とはいえ、16年間母親の代わりとしていつも傍にいてくれたミス・テイラーが、家を去ってしまう事に寂しさと後悔を感じます。広い屋敷には父と2人取り残されてしまいました…
思い出に浸るエマ。窓の外には、ナイトリー氏がこちらに向かって歩いてくる姿が見えます。嬉しさに手を振るエマでした
この経験から縁結びを封印したエマでしたが…年下の友人であるハリエット・スミスを牧師のエルトンと結び付けようとターゲットを決めてしまいます。
ハリエットは、ナイトリー氏の領地の農夫ロバート・マーティンからプロポーズを受けます。しかし、エマは内心、身分の低いマーティンとの結婚には反対です。そして、ハリエットがプロポーズを断るように仕向けてしまいます。
出自の分からないハリエットの結婚を破談させ、ハリエットの幸せを壊してしまったエマをナイトリー氏は激怒します。
エマは、ハリエットが高い階級の家柄かもしれないと思い込んでいます。しかし、ナイトリー氏は出自の不明な女性を高い階級の男性は決して伴侶に選ばないと断言します。
2人の意見は何時までも平行線です。
そして、エマの思い込みが最悪の結果となってしまいます。
エルトンはエマが思ったような人物では無く。裕福な女性と結婚しようと、実はエマを狙っていたのです。この計画は失敗しハリエットに悲しい思いをさせてしまいます。
ナイトリー氏の忠告通りでした。
村では噂の的になっていたウェストン氏の前妻との子であるフランク・チャーチルとミス・ベイツの姪であるジェーン・フェアファクスが帰郷します。チャーチルに好感を持ったエマ。一方ジェーンは口数が少なく秘密主義に感じエマとは馬が合いそうにありません。
ウェストン夫妻は、エマとフランク、ナイトリー氏とジェーンの2組がカップルになるのではと期待します。
エマは、ロマ(放浪者のグループ)からハリエットを救ったチャーチルをハリエットは新たに好きになったと思い込み2人をくっつけようと考えます。
懲りずにキューピッドになろうとするエマ…
しかし、大きな後悔が彼女を待ち受けています…
勝手に私見考察
ここから先はネタバレがあるかも、ご注意下さい。
何度も映像化されているエマですが、私はこの作品が秀逸だと思っています。
まず、ナイトリー役のジョニー・リー・ミラーがイイ。
彼はどちらかと言うと癖の強い役柄が多いと思いますが「トレインスポッティング」「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」など強烈なインパクトがあります。
彼の細やかな役作りが、演じるキャストの隠れた内面までも表現されています。
数々の俳優がナイトリーを演じていますが、ミラーのナイトリーが最高だと思っています。
大地主でありながら気さくで寛容。零落したベイツ家を心配したり、エマの父ヘンリーへの気遣い等、気配り上手なナイトリー氏を演じています。
何の苦労もなく、天真爛漫な箱入り娘のエマを演じたロモーラ・ガライも良かったです。階級意識が強いエマですが、ガライのエマは全く嫌味を感じません!
失敗を繰り返し成長するエマの姿を上手く演じていました。
一番好きなシーンは、断トツ2人が初めてダンスをするシーンです。2人のトキメキ感が画面から伝わってきて、観ている私も一緒にドギマギ…
冒頭書いたように、この作品は同じ頃に母親を亡くした3人の子供達が軸となっています。
主人公のエマは、気鬱症となった父の意向や介護もあり、海を見る事さえ出来ずに大人になります。
しかし、自分達姉妹を手放さず育ててくれた父に深く感謝するエマ。結婚願望無しと公言しますが、内心は父を 1人に出来ない為、はなから考えもしなかったのかもしれませんね。
一方、ジェーンをやむ無く知人に預ける事にした伯母のミス・ベイツ。
その日から祖母のベイツ夫人は言葉を発しません。ミス・ベイツは罪悪感からか旧友のウッドハウス氏の元を訪れジェーンの話ばかりします。子供のエマは何時も比較されているようでベイツ夫人達の訪問は苦痛でした。
このような場面から、この時代の人々の寛容さを感じます。旧友のベイツ夫人の境遇を察しているエマの父ヘンリーやナイトリー氏の気遣いが至る所で感じられます。正に英国ジェントルマンですね。
また、ウェストン氏もフランクを伯母へ預けた事から中々帰郷しないフランクに何も言えず、見守る事しか出来ません。フランクは、身分の高い女性と結婚しなければ伯母の遺産が手に入らない為、ジェーンとの婚約を秘密にしてエマを利用し多くの人を傷つけます。
こうした複雑な人間模様を描くところが、ジェーン・オースティン作品の人気の一因でもあると思います。
また、ナイトリー氏は父の介護があるからと断りに来たエマに、僕が行ったり来たりするからと諭し、エマをリードしてヘンリーに結婚の許しを貰いに行くシーン…
各作品で演出に違いがありますが、このシーンも素敵過ぎです!惚れてまうだろー状態です…
エマを映像化した作品の中で、本作は珍しく2人の結婚式シーンはありません。変わりにナイトリー氏が一度も海を見た事のないエマに海を見せるシーンで終わります。
さすがBBC製作と思わざる負えない、ストーリーの盛り上がりをしっかり捉えた作品で、何度観ても飽きません。
一押しの作品です。
結局エマの今後の人生も、何不自由なく幸福な人生となりそうですね…羨ましい限り…